「今思ったらおかしいが、教義の中で(日本は)韓国を助けるためにあるから、金銭面でも助けないといけなかった」。30代の女性がマイクを手に語る生々しい証言に、議員たちは耳を澄ました。

 8月31日、衆院本館の一室。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治との関係が問題となる中、立憲民主党など野党が開いたヒアリングが行われていた。女性は両親などが教団の信者だった「2世」で、信仰心は既にない。

 女性が生まれて間もなく、病弱な親族を抱える悩みを教団が解消してくれると信じた両親と祖母は信仰にのめり込んでいった。「先祖が苦しんでいる」と言われて買った約300万円の弥勒(みろく)菩薩(ぼさつ)像など「霊感商法」の被害や献金は少なくとも1億円に膨らんだ。

 韓国経済を揺るがせた1997年のアジア通貨危機の際には、1人当たり160万円の献金を余儀なくされた。女性への取材によると、献金を求める教団が当時説得に使った言葉は「韓国が大変な時は日本が経済的に支援するのが当たり前」。日本が韓国を助けるという構図だ。

 その関係は、父親の末路にも見てとれる。がんを患った父は教団の勧めでソウル近郊の清平(チョンピョン)を訪れた。後に、教団本部などさまざまな関連施設が建ち並ぶ聖地だ。父はそこで幹部の霊能者に「病院に行くな。行けば悪霊がつく」と言われ、痩せ細った体で山道整備のため石段を運んだ。

 そして清平に通い続けた末、病状が悪化し帰らぬ人となった。「統一教会の言うことはうそだった」。女性はそう感じ、祖母が亡くなったのを機に母と一緒に教団から離れた。女性は、教団を巡る日本のこうした立ち位置についてこう言った。…(以下有料版で、残り1393文字)

毎日新聞 2022/9/9 18:00(最終更新 9/9 19:37)
https://mainichi.jp/articles/20220909/k00/00m/010/198000c