「朝日の記者みたいになりたいのか」脅迫から始まった旧統一教会との35年 500人の脱会に成功した牧師、山崎浩子さんも | 47NEWS
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2022/09/25
Published 2022/09/25 10:00

 安倍晋三元首相銃撃事件では、逮捕された山上徹也容疑者(42)が取り調べに「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に恨みがあった」と供述していることが明らかになり、現在もなお旧統一教会に多額の献金をして苦しむ家庭が多くいる実態が浮かび上がった。この衝撃的なニュースを複雑な思いで見た人がいる。牧師の杉本誠さん(74)は35年間、脅迫や妨害ともとれる行為を受けながら、旧統一教会からの500人以上の脱会に関わってきた。「もし山上家ともつながれていたら、違った結果があったかもしれない」。凶行に至るまでに、手を差し伸べる方法はなかったのかと自問している。(共同通信=助川尭史)

▽「助けてください」熱意に動かされ

 旧統一教会との関わりは、杉本さんが愛知県西尾市にある日本キリスト教団西尾教会の牧師となった1987年にさかのぼる。当時、旧統一教会の霊感商法は社会問題になりつつあった。批判する講演会の代表を引き受け、開催を知らせるチラシを配った。するとある日の夜、自宅に「講演会について話がしたい」と電話があった。
 指定された喫茶店に行くと、そこにいたのは見ず知らずの男性7人。相手は名前を名乗らず「講演会を中止してほしい」と迫った。杉本さんが断ると、相手の1人が「朝日の記者みたいになりたいのか」とすごんだ。(略)

その場は他にいた男性がとりなして事なきを得たが、その後は連日、無言電話や自宅の雨戸に石を投げられる嫌がらせが続いた。
 脅迫があったことを聞きつけた新聞記者が一部始終を記事にすると、信者の家族から「霊感商法の被害にあった」という相談電話が相次ぐようになった。だが、当時の杉本さんは牧師になったばかり。自分にできることはないと思い、ほとんどの相談は断っていた。

 転機となったのは、娘が入信したという夫婦の相談を受けたこと。知人の依頼だったため断り切れなかった。先輩牧師と三日三晩、泊まりがけで娘の説得を続けた結果、脱会の意思を示してくれた、ように見えた。しかし、帰宅した杉本さんの元に届いたのは「娘が再び教団に戻ってしまった」という知らせだった。

 「改心したように見せかける『偽装脱会』を見抜けませんでした。それなのに失敗した私の元に、親御さんたちはわらにもすがるような思いでやってくる。そんな顔を見ると、牧師としてどうしても放っておけませんでした」
 助けるためにはまず自分が力をつけないといけない。それからは寄せられる相談に一件一件向き合いながら、経験を積んでいった。

 多くの信者と向き合い、旧統一教会の教義について理解を深めるうちに、その内容が伝統的なキリスト教とは相いれないことに気付いた。その点を、自身の著書で次のように記している。

 「統一教会は(聖書が人類の罪を償ったと教える)イエスの十字架が失敗したという一つの解釈を立てるんです。(中略)宗教というものは聖典があって宗教ですから、教典を否定するという形になってくれば、これはもう宗教の枠からでていくことです」「宗教は人の心に平安を与え、人の魂を救うことが目的なんです。その目的を取り違えている実態がある限りは、私たちは(被害者からの相談を)受けざるを得ない」(杉本誠「統一協会信者を救え」より)」

 1993年にはロサンゼルス五輪新体操代表の山崎浩子さんの脱会に携わった。山崎さんは前年に韓国・ソウルで開かれた旧統一教会の合同結婚式に参加し、教団の広告塔として知られた存在だった。「さすがに脱会は無理だと思いました。それでも他の多くの相談と同様に『助けてください』という家族の熱意に触れたら、断るわけにはいかなくなりました」

 山崎さんの説得はマンションの一室を借りて行われた。杉本さんは自宅から連日通ったが、複数の見張りが、当時珍しかった携帯電話を駆使して杉本さんの行動を逐一監視し、車で追い回すこともあった。それでも監視の目をかいくぐり、教団の教義への疑問について、神学書をひもときながら話していくうちに、かたくなだった山崎さんの態度は徐々に和らぎ、説得に耳を傾けてくれるようになった。

(略)

※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。