北朝鮮による拉致被害者の田中実さんと知人の金田龍光さんについて、斎木昭隆・元外務事務次官が朝日新聞のインタビューに対し、北朝鮮側から生存情報が提供されたことを認めたことについて、林芳正外相は13日、「今後の対応に支障を来す恐れがあることから、具体的内容や報道の一つひとつに答えることは差し控えたい」と述べた。

 林氏は、衆院外務委員会などの連合審査会で、立憲民主党の徳永久志氏の質問に答えた。

 田中さんは政府が拉致被害者として認定し、金田さんは「拉致の可能性を排除できない」とされている。日朝は2014年、北朝鮮が拉致被害者らの調査を行い、随時通報することを盛り込んだ「ストックホルム合意」を結んだ。

 当時、外務事務次官だった斎木氏は朝日新聞のインタビューに対し、北朝鮮から田中さんや金田さんの生存情報が提供されたと報じられていることについて、「北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りだ。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取らなかった」と証言。インタビューは9月17日に朝日新聞デジタルで報じた。

 徳永氏は13日の連合審査会で、「外交の中枢にいた方の証言は非常に重い」とただしたが、林氏は斎木氏の証言への言及は避けた。その上で、ストックホルム合意以降、北朝鮮から報告書は提出されていないなどと説明。拉致被害者としての認定の有無に関わらず、即時帰国、真相究明をめざすと強調した。(田嶋慶彦)

朝日新聞 2022年10月13日 17時00分
https://www.asahi.com/articles/ASQBF575HQBFUTFK004.html?iref=comtop_7_04