日本海に浮かぶ人口約350人の離島・粟島(新潟県粟島浦村)で、村職員が大幅に不足
する異常な事態が続いている。1日付で県から職員1人の派遣を受けたが、定数には遠く
及ばず、村政運営の危機が解消するめどは立っていない。

県は粟島浦村からの要請を受け、1日付で課長補佐級の職員を派遣。10月から空席と
なっている役場の中枢を担う総務課長として着任した。県や村によると、村の一般事務職員
は定数17人。派遣された県職員を含めて13人(休職者を除く)になったが、来年1月末
までに3人が家庭の都合などで辞職予定で、職員は10人(同)となる見込みだ。

村は県だけでなく、市長会、町村会にも職員派遣を依頼。内閣府の「地方創生人材支援制度」
を活用し、国にも職員派遣を要請した。県市町村課の担当者は「災害発生時を除いて年度
途中の職員派遣は異例。もともと職員が少ない自治体では退職者が出ると影響が非常に
大きいが、職員の半数近い減少となれば、『災害級』の事態だ」と話す。

背景には、高齢化や人口減で人材確保を島外に頼らなければならない事情がある。村によると
約30年前は職員の約9割が島内出身者だったが、現在は2人のみとなった。島外出身者
は3年ほどで辞めるケースが多く、新たな雇用が追いつかず、残る職員が複数の業務を
兼任して負担が増す事態が生じているという。

今年9月に初当選した脇川善行村長は「このままでは持続的な村の運営が厳しい」と危機感
をにじませる。国の職員派遣が実現したとしても、来春以降となる見込みだ。脇川村長は
「他の自治体の力を借りながら、2、3年で立て直したい」と話すが、職員の補充のめどは
立っていないという。

田村秀・長野県立大教授(地方自治)は「人口減少が深刻化する中、全国の自治体で同様な
ことは起こり得る」と指摘した上で、「自治体が県や周辺市町村と人的連携を深めるだけで
はなく、郵便局や漁協など地域の職業と公務員の兼業を認めるなど、国にも柔軟な制度構築が
求められる」としている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20221203-OYT1T50082/