個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の拡充をめぐる与党の税制調査会の議論が佳境を
迎えています。岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の具体策として注目されるNISAの
拡充。ねらいどおり貯蓄から投資へのシフトが進み、マーケットを活性化させることにつな
がるのでしょうか。(経済部記者 真方健太朗)

貯蓄から投資へのシフトは進む?

与党の税制調査会は、NISAの新たな制度をつくったうえで、投資できる期限を廃止して
恒久化するとともに、非課税で保有できる期間も無期限とする方向で調整しています。

一方、残る議論の焦点は投資額の拡大です。「つみたてNISA」では投資額の上限が年間40万円
累計で800万円までとなっています。これをどこまで引き上げるのか。

政府・与党内では、上限引き上げの要望がある一方、大幅に引き上げた場合、恩恵が富裕層
に偏るのではないかという慎重な意見もあり、今月中旬を予定している税制改正大綱の決定に
向けて詰めの調整が行われる見通しです。

NISA拡充のねらいは、家計の貯蓄から投資へのシフトを進めること。日本の家計が保有する
金融資産は増加傾向にあり、ことし6月の時点では2000兆円を超えています。

このうち株式や投資信託、債券などの投資資産で保有する人の割合は合わせて15.5%にとど
まっています。半分以上は依然、「現金・預金」です。「貯蓄から投資へ」のスローガンは
2001年に発足した小泉政権の時にはすでに掲げられ、安倍政権、岸田政権と引き継がれてきま
した。政府が声を掛け続けてもこの20年間、貯蓄を重視する傾向は変わりませんでした。

それはなぜなのか?

アナリストなど市場関係者に取材すると、
「バブル崩壊やリーマンショックでリスクを避ける傾向が強まった」
「日本経済の低成長が続き日本株に投資するうまみが少なかった」
「デフレが進んでいたため貯金をすることが家計を守るという考え方が広がった」
という分析が示されました。

「多くの人が老後の蓄えに不安を感じているが、新型コロナで在宅勤務となったことをきっ
かけに投資家が増えている。NISAの拡充で長期で保有する個人投資家が増えれば株価を
下支えする効果が期待できる」

日本証券業協会のまとめでは、2021年度末時点での国内の個人株主の数は1457万人で2年前の
同じ時期と比べて98万人、率にして7%ほど増えています。特に20歳以上40歳未満の現役層の
増加が著しいということです。

今回のNISAの拡充をきっかけに、個人投資家の増加傾向をさらに後押しし“投資アレルギー”
が解消するきっかけになる可能性があるとしています。(抜粋)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221209/k10013918321000.html