「力がなければ国が滅びる」 出漁を続ける石垣市議が憂う尖閣の未来
産経2022/12/8 11:00村上 栄一
https://www.sankei.com/article/20221208-23RV4T6W75MJPMCQK4TMMFLK7E/

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中国海警局の船が連日現れることで緊張状態が続く尖閣諸島(沖縄県石垣市)。その周辺海域にたびたび出漁している石垣市議の仲間均氏は「なぜ中国の船がいつもいるのか、不思議で仕方ない。国を守るというのは力と力の均衡だ。力がなければ国は滅びる」と危機感を訴え続けている。愛媛県西条市で行われた仲間氏の講演を取材した。

仲間氏は「尖閣諸島を守る会」の代表として活動しており、平成6年に尖閣諸島への上陸調査を公約に掲げて立候補した同市議選に初当選。翌年、魚釣島に上陸したのをはじめ、これまでに南小島や北小島、久場島といった尖閣諸島に16回、上陸している。22年からは漁師として中国海警局の船の威嚇を受けながらも「最前線で頑張るしかない」という決意で出漁を続けている。

西条市で11月19日、「尖閣の海 命賭して守る!」と題して開いた講演会で、仲間氏は10月1日に漁船「鶴丸」で出漁した際の様子を報告した。仲間氏は当日について、中国海警局の船が2隻、尖閣諸島の海で待ち構えていたことなど、体験した事実を述べた。海警局は2018年7月に軍の最高指揮機関、中央軍事委員会の指揮下にある人民武装警察(武警)に編入されており、仲間氏は「10年ほど前は迷いながらゆっくり前進したりバックしたりしていたが、軍の指揮下に入った今は正確に狙いを定めて待っている」と、日増しに感じている緊迫度の高まりを説明した。

海警局の船は領海内に侵入していた。鶴丸は午前7時ごろから正午ごろまで、海上保安庁の巡視船に守られる形で操業したが、中国海警局の船は約30メートルの距離まで接近してくることもあったという。鶴丸はエンジントラブルで午後0時半ごろに漁を切り上げ、石垣島へ引き返すことになったが、その際に中国船はいつものように追尾してきた。
石垣島と尖閣諸島の間の距離は約170キロ。仲間氏によると、以前はこの中間あたりで追尾をやめていたが、今回は石垣島まで約80キロの近海までついてきたという。夜になって石垣島に帰着した仲間氏は、中国船の行動がエスカレートしているとの認識を強めた。

第11管区海上保安本部によると、10月1日は午前3時15分ごろから、中国海警局の船2隻が日本の領海に侵入、午後2時15分ごろに接続水域に出た。具体的な場所については、警備上の観点からいえないとしている。
「中国船が漁船に接近すると、巡視船が黒煙を噴いて間に入ってくれる。現場の職員は危険を感じながら命がけで戦っており、感謝している」とする一方で、「なぜ、領海に中国の船がいるのか。不思議でならない」と憤る。11月15日に上京し、「どうにかならないのか」と、政府に毅然(きぜん)とした態度を中国にとるよう要請活動も行った。しかし、「尖閣諸島はわが国固有の領土・領海であり、領土問題は存在しない」という従来通りの回答だったという。

講演後の質疑応答の中で、仲間氏は「活動して30年。石垣島でも『何をやっているんだ』といわれる。石垣市民はあっけらかんとしており、多くの国民と同様、危険な状態だとは思っていない。私は毎月尖閣諸島に行っているから、なんで中国の船がいるのかと疑問を持つことができる。国を守るというのは力と力の均衡があってのことで、力がなければ国は滅ぶ。有事の際に即、反応できなければ」と強調した。
講演会を主催したのは令和3年11月に発足した「尖閣諸島を守る愛媛の会」で、会長は仲間氏の友人で、松山市議の土井田学氏が務めている。土井田氏は「日本は海洋国家だ。シーレーンを中国に押さえられたらどうするのか」と述べ、活動への支援を呼び掛けた。