小林直子 長野佑介2023年3月2日 17時30分

 選挙で使った名前を議員活動で使えない――。そんな現実に直面した議員がいる。旧姓の使用を認める制度が議会になかったからだ。朝日新聞の調査では、同様に規則のない地方議会が全体の8割に上る。

 神奈川県山北町議の冨田陽子さん(38)は2019年の初当選直後、当選証書を見て驚いた。証書にある自分の名字が選挙で使った「冨田」ではなく、戸籍名の「山田」になっていたからだ。ほかの書類もすべて同じ。議会事務局に尋ねると、「戸籍名じゃないとダメなんです」と言われた。

 当時、同町議会には、結婚前の旧姓など「通称名」の使用を認める規則がなかった。そのため、議員は戸籍名で登録し、活動することになっていた。

 町内で林業を営む冨田さんは仕事上は「冨田」を名乗ってきた。そもそも結婚で姓を変えたくなかった。18年に結婚した夫(37)とは、婚姻届を出す14日前から毎日じゃんけんをし、勝ち越した方の姓にすると決めた。結果的に冨田さんが負け、改姓した。

 だから、選挙でも迷わず旧姓を選んだ。ほかの自治体では旧姓で活動している議員もいたため、当選後に「改姓」を迫られるとは考えていなかった。

https://www.asahi.com/articles/ASR324168R2QUTIL05M.html