2023年03月04日13時33分

 第2次世界大戦中に外交官の杉原千畝氏(1900~86年)が発給した「命のビザ」によりナチス・ドイツの迫害から逃れ、神戸市に一時滞在したユダヤ人のマーセル・ウェイランドさん(95)が2月末、82年ぶりに同市を訪れた。「ずっとありがとうと言いたかった。心からありがとう」。ウェイランドさんは地元住民らに感謝の言葉を繰り返した。

 リトアニア・カウナスで日本領事代理を務めていた杉原氏は大戦中、外務省の方針に背き、迫害を受けたユダヤ人に日本を通過するためのビザを発給した。ウェイランドさんは、このビザで命を救われた1人だ。

 ウェイランドさんはポーランド出身。ドイツが同国に侵攻した1939年、家族と共にリトアニアに逃れた。一家はリトアニアで杉原氏のビザを受け取り、旧ソ連のウラジオストクを経て福井県の敦賀港に上陸し、41年春に神戸市に到着した。同市には半年余り滞在し、中国・上海へ旅立った。ウェイランドさんは戦後、オーストラリアに渡り、今も暮らしている。

https://www.jiji.com/sp/article?k=2023030400119&g=soc