Published
2023/04/30 12:50 (JST)
 「万歳」は読んで字のごとく、古くは中国で齢(よわい)の1万年、つまりは長久や長寿を意味した。万年まではいかないが、万日とて積み重ねた長い歳月がある。
 島根県浜田市弥栄地域で1995年12月14日から続く交通死亡事故ゼロがきょうで1万日目を迎えた。一日を無事に乗り切れば、ついに悲願達成となる。信号機が一つもない小さな町で、50日前から10日ごとに防災無線で流れた注意喚起とカウントダウンを聞きながら、関係者や住民は気が気でなかったようだ。

 語り継がれる苦い記憶がある。合併前の旧弥栄村時代に村を挙げて1万日を目指したが、目前に起きたダンプカーと軽トラックの衝突事故により記録は途絶えた。93年の11月8日、亡くなったのは広島県の男性で、達成まであと14日だった。盛大にアトラクションまで用意していた記念大会は急きょ中止になった。
 あれからおよそ30年。青パト隊のメンバーたちは年を重ねながら毎月決まった日に沿道に立ち、交通安全の呼びかけを続けてきた。記録のためではなく、住民の命を守るという信念が支えたのだろう。
 来月9日には、幻となった記念大会が予定されている。その前に大型連休中は市内外から訪れる人の車が増えるだろうから、くれぐれも気を緩めずに。そして記念大会は今度こそ万歳の声を響かせたい。偉業達成を祝い喜び合うとともに、死亡事故ゼロがさらに長く続きますようにと。

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