[2023年5月9日19時4分]

安倍晋三元首相を襲った凶弾は、胸の国会議員バッジも撃ち抜いていた。関係者によると、昨年7月に奈良市で起きた銃撃事件で粉々になったバッジの破片を、奈良県警の捜査員が現場で収集。安倍氏を守り切れなかった形で辞職した当時の県警本部長の鬼塚友章氏が、安倍氏の妻昭恵さんに手渡し、大切に保管されている。

同9月27日、東京都千代田区の日本武道館。ほほ笑む安倍氏の遺影下の式壇は、富士山の左右に広がる裾野や山頂の雪化粧をイメージし、白や黄色の生花で彩られていた。遺骨は式壇の中央に安置され、その隣には議員バッジが供えられた。

事件が起きたのは7月8日午前11時半ごろだった。山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=は散弾式の手製銃で、街頭演説中の安倍氏に向けて2度発砲したとされる。弾は安倍氏の胸にあった議員バッジ(直径約2センチ、厚さ約1センチ)の側面に命中し、バッジは粉々になった。

事件後すぐ、県警は現場の実況見分を実施。バッジは複数の小さな破片となって散らばっており、安倍氏が倒れた位置から約10メートル離れた場所で見つかったものもあった。北朝鮮による拉致問題の解決を願うシンボルの「ブルーリボンバッジ」も二つに割れていた。それらを捜査員が一つ一つ拾い集めた。

昭恵さんによると、昨年夏、鬼塚氏や県警の捜査員らが安倍氏の東京の自宅を訪れ、鬼塚氏が議員バッジやブルーリボンバッジを昭恵さんに手渡した。バッジは木製の箱に収められていた。昭恵さんは「ありがとうございます」と感謝の意を伝えた。

「どんな事件でも、遺品はご遺族にお返しするもの」と捜査関係者は話す。遺品のバッジは昭恵さんが大切に保管している。(共同)

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