4歳の女児を暴行して死亡させたとして母親が傷害致死の疑いで逮捕された事件を巡り、死亡した女児と同様に、三重県の児童相談所が虐待被害のおそれがある「要保護児童」と認識しながら一定期間、目視で様子を確認していない事例が、女児が搬送先の病院で死亡した2日後の5月28日時点で、県内で108件あった。県は11日、対応検討会議を開き、こうした児童の目視確認の徹底を、緊急の改善策に盛り込む方針だ。【寺原多恵子】

 死亡した女児は、2022年7月から保育園を長期欠席していた。児相は、事件が発覚するまでの1年近く母子に直接会わず、きょうだいの通う学校など周辺情報での安否確認にとどまっており、対応が問題視されている。


 県の児相の担当部署は女児の死亡を受けて、児相に虐待に関わる通報や相談があったが、一時保護せず在宅で経過観察する児童を洗い出した。その結果、県内の約1100件のうち、定期的な状況確認を要する子どもを目視確認できていない事例が108件あると判明した。中には、児相側は会いに行ったが会えなかったケースなどもあった。

 このため、県は児相の職員が面会したり、通学・通園先の職員に確認したりして、5月中に、全ての無事を確認したという。


 県は11日、第三者委員会の結論を待たずに必要な改善策を、県の対応検討会議でとりまとめる。目視の確認の他、関係機関との連携の強化などが盛り込まれる見込み。

保護率39%で対応せず AIシステム 第三者委で検証へ
 2020年に県内の児童相談所で全国に先駆けて導入した、AI(人工知能)を活用する「児童虐待対応支援システム」について、一見勝之知事は10日、使われ方の検証を外部有識者による検証委員会に諮る方針を示した。津市で4歳の女児を暴行して死亡させたとして母親が傷害致死容疑で逮捕された事件の前、虐待の通報を受けた児相が女児の一時保護を見送った際に、AIの評価が根拠の一つとなっていた。


 10日の県議会全員協議会で述べた。外部有識者の検証委員会は、14日に初会合が開かれる。

 県は女児への対応を巡り、2022年2月に虐待の疑いで通報があった際、あざが虐待によるものと断定できなかったことや、母親が児相の支援や指導に応じる姿勢があったことに加え、AIを活用した対応支援システムの評価を元に、一時保護を見送ったと説明した。今回のAIの評価は、類似事例の保護率が39%だった。早期の対応が必要な目安を80%以上としており、39%は「高くはない」という認識だったという。

 県によると、システムは児相が過去に対応した約1万3000例をデータ化。一時保護を検討する際、年齢やけがの状況などを入力すると、過去の事例で保護した割合が表示される。子どもへの質問の仕方を提案する機能もあり、業務の効率化や経験が浅い職員を支援できるとしている。


 県児童相談センターの中沢和哉所長は「AIの示す数値はあくまで目安であり、最終的には人間が会議などを経て判断している」と強調。一見知事は「(事件のケースで)使い方が適切でなかったとは言えないが、(判断に)AIをよりどころとしまうこともある。そこをどう修正していくか考える必要がある」と述べた。【寺原多恵子】

毎日新聞 2023/7/11 09:44(最終更新 7/11 09:59) 1329文字
https://mainichi.jp/articles/20230711/k00/00m/040/037000c