「自警団ごっこ、もう止めませう」美人画・竹久夢二が描いた「心の闇」 ヘイトや神宮外苑問題に通じる言葉
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2023年7月17日 12時00分

 大正ロマンを代表する詩人画家・竹久夢二(1884~1934年)が、関東大震災発災直後の様子を短文とスケッチ画で描いたルポ「東京災難画信」。都新聞(現東京新聞)に21日間にわたり連載された。災害の混乱で露呈した差別や貧困、根拠のない噂うわさ…。描かれた一端は時空を超えて、現代に通じる問いに重なっている。(木原育子)

 炊き出しの長い行列、地面にへたれこみ1人でたばこを売る女性、自警団のまねをして友人を竹やりで突く子ども、流言飛語や荒唐無稽なデマ…。ルポ記事は、優しい筆致の絵に心を配った短文が添えられている。

◆関東大震災の翌日から街を歩き

 7月中旬、「金沢の奥座敷」の湯涌温泉内にある「金沢湯涌夢二館」(金沢市)で、夢二が描いた東京災難画信の企画展が開かれていた(9月10日まで)。
 太田昌子館長が「夢二というと、美人画のイメージがあるかもしれないが、ジャーナリスティックな一面と人間愛を根幹にした人でもあった。繊細さの中に、言うべきことは一歩も引かない芯の強さも併せ持つ人だった」と語った。
 震災当時、夢二は東京・渋谷で暮らしており命は無事だっが、破壊された帝都の惨劇に衝撃を受けた。今を書き残しておかなければと、震災翌日からがれきの街を歩いてルポ。21日分の記事に仕立て、9月14日~10月4日まで都新聞で連日掲載された。
 「世の中が苦しくなると、社会は必ずはけ口を求める。今に通じる一面があるように思う」と太田館長。震災記録ではあるが、現代に妙に重なる視点も見え隠れする、という。

◆「現代にもそのまま跳ね返る」

 その真意について、学芸員の川瀬千尋さん(37)が解説してくれた。例えば、震災後の火災で焼け野原になった空き地を描き、「どう利用するか知らないが、せめて…緑の楽土にしてほしい」との言葉を残したルポ(9月20日掲載)。川瀬さんは「夢二は様変わりするビル街など近代の商業主義を批判していた。今も東京の明治神宮外苑で、緑を残そうという市民の大きな声があるが、夢二も100年前から自然豊かな緑の都市を願っていた」と話す。

 同25日掲載のルポでは、災害時の停電で、皮肉にも例年以上に美しくなったこの年の中秋の名月をめでる親子の絵に「生活の愚かさを醒さましてくれた」との言葉を記した。極端な都市化を憂う思いがこの絵からも見て取れる。
 9月19日掲載の紙面では、「万ちゃん、君の顔はどうも日本人ぢゃないよ」との言葉から始め、差別問題に切り込んだ。外国人に見立てられた万ちゃんが自警団役の子どもたちに、泣くまで殴り続けられるさまが描かれ、「自警団ごっこをするのは、もう止やめませう」と結んでいる。

(略)

※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。