熊本市は25日、市政の基本方針を定める自治基本条例の改正案について、市民の定義に加える予定だった「外国籍を含む」との記述を削除する方針を明らかにした。「外国人参政権を認める」などという誤解から反対意見が多数寄せられたのが理由で、市の担当者は「市民の誤解や不安を招かないため」と説明している。

 市によると、2022年12月公表の条例改正案では、まちづくりに幅広い住民が参加しやすい環境を整えるため、今後増加が見込まれる外国籍の住民を「市民」の定義に追加する方針だった。施行されれば政令市で初となる見通しだった。


 しかし、22年12月〜23年1月に意見公募したところ、1476人(市内457人、市外1019人)から1888件の意見が寄せられた。このうち9割が反対意見だった。「外国人による参政権を認めたことにならないか」「移民を認めるものになる」など誤解に基づく声が相次いだという。市は、新たな改正案を9月の定例市議会に提出するといい、担当者は「『外国人』を明記しないことが、市民から外国人を排除するものとは考えない」と話した。

 広島文教大の岩下康子准教授(多文化共生)は市の対応を「誤解に基づく反対意見を結果的にそんたくした形になり、非常に残念だ」と指摘。「外国籍の住民は(市に対し)排他的でネガティブな印象を持つだろう。市は改正の意図を責任を持って、丁寧に説明すべきだった」と語った。


 市によると、熊本市内の外国籍の住民は、22年12月末時点で7272人。全国では長野県小諸市や高知県四万十町などで、自治基本条例の市民の定義に外国人を含む記述があるという。【中村園子、栗栖由喜】

毎日新聞 2023/7/25 20:47(最終更新 7/25 20:47) 690文字
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