日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を17年務め、数年前に退職。この9月『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、特殊能力のあるFBI特別捜査官について聞いた。

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 CIAやFBIでは、透視やテレパシーなどの特殊能力を持った人を特別捜査官として雇っているという。

「専属で働く人もいれば、普段は別の仕事をしていて必要な時に呼ばれる人もいます」

 と語るのは、勝丸氏。勿論日本には、CIAやFBIのような特殊能力を持った特別捜査官はいない。

「日本の警察は、捜査がうまく進まない難事件が起こった時、特殊能力を持った人にお金を払って捜査協力してもらうことができません。そこで警察は民放のテレビ局に働きかけて、特殊能力のある元FBI捜査官を招いて番組を制作してもらうことがあります。番組で犯人の行方を推測してもらい、捜査の参考にするというわけです」

平田信の潜伏先を透視
 1995年3月、国松孝次警察庁長官射撃事件が起きた。実行犯と疑われた元信者の平田信は長期間逃亡生活を送っていた。捜査は難航したが、この時、元FBI捜査官が彼の行方を透視している。

「2002年から2008年までに計13回放映された特別番組『FBI超能力捜査官』(日本テレビ系)に、ジョー・マクモニーグルさんという元FBI捜査官が何度か出演しています。彼はアメリカの元陸軍諜報局の情報官で、平田がこの場所に潜んでいるか、或いは潜んでいたと言及しました。実際に捜査員がその場所に行ってみると、なんと平田がそこに潜伏していたことが判明しました」

 平田は2011年12月31日に東京・丸の内警察署に出頭、12年1月1日に逮捕された。マクモニーグル氏の話は捜査に役立ったという。

「日本のテレビに出演する元FBI捜査官では、マクモニーグル氏が最も有名です。透視能力に長けていて、日本で『FBI超能力捜査官』という本も出版しています」

 マクモニーグル氏の透視能力はアメリカでも、雑誌「ニューズウィーク」「タイム」、著名なテレビでも紹介されている。米国民の間でもこうした特殊能力を持った人が捜査に関わることは認知されているという。

 実は、勝丸氏もかつて自身にも特殊能力があるのではないかと思ったことがあるという。オカルトめいた話になってしまうが、初対面の人に会った瞬間、頭の中にその人の記憶が映像として見えることがたまにあるというのだ。

「私が大学生の頃にこんなことがありました。同級生の女性と対面するたびに、『草笛を吹いている教師』の映像が頭の中に浮かんできました」

「そのことを彼女に話したら、彼女はハッとした表情になり、こう言いました。『それ、私が高校生の時の先生よ。どうしてあなたが知っているの?』。彼女は高校時代に習った教師たちに何の感情も抱かなかったそうですが、世界史の授業の終わりに草笛を吹く中年教師だけは深く印象に残ったそうです」

被疑者がバーで酒を飲んでいる映像
 勝丸氏が交番勤務していた頃にもこんなことがあった。

「私がある事件の容疑者の男を現行犯逮捕した時のことです。容疑者は幼い頃に父親が蒸発し、母親も亡くなっていて、天涯孤独でした。しかし、彼の取り調べに立ち会った時、なぜか子どもの頃とおぼしき男性と母親、そして青年の3人が一緒にいる映像が頭に浮かびました。そこで容疑者に『お前、兄ちゃんがいるだろう』と聞くと、『身寄りなんかない』と否定していました。しかし後日、この男性には腹違いの兄がいることが判明しました」

 ロシアのスパイを追跡している時にもこの能力が生かされた。

「ロシアのスパイを追跡していた時、彼の行く先が見えました。それで部下をその場所に配置すると、スパイが本当に現れたのです。透視やテレパシーなどの超能力者は、日本ではオカルト扱いされていますから、特別捜査官として使うことはできません。日本でも特殊能力者をもっと活用すべきと思っています」

デイリー新潮取材班

2021年11月5日 掲載

https://www.dailyshincho.jp/article/2021/11050600/