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東洋ハウジングが計画する木造高層住宅。高層棟と右側の低層棟で構成する=同社提供

 千葉県鎌ケ谷市内に来春、木造としては国内最高層となる15階建て住宅が着工する。柱や壁、床を始めとし、主要構造のほとんどを木材でつくる。施主は地元の住宅建築会社。国産材の需要拡大を目指すとともに、「小さな会社でも挑戦できることを示したい」という。

 計画しているのは鎌ケ谷市の住宅建築会社「東洋ハウジング」。東武野田線新鎌ケ谷駅などに近接する国道沿いの約3200平方メートルの敷地に、15階建て(高さ約45メートル)の賃貸マンション兼本社事務所、2階建て商業施設などをつくる。

 来年2月に着工し、2023年秋の完成を目指す。林野庁によると、木造高層住宅としては都内に50メートル級のビルが建設中だが、15階建ては現時点で着工が決まっている建物では全国で最も高層になるという。

 「東洋木のまちプロジェクト」と名付けた計画の中心になるのは高層棟だ。上層14階分は柱や梁(はり)、壁、床だけでなく、エレベーターシャフトといった金属が常識だった部分まで木材を使う。1階部分については建物の重量バランスから鉄筋コンクリートにした。

 使う木材は国産の杉やヒノキを加工した「CLTパネル」。板材の繊維方向が直角に交わるように何層にも重ねて接着した板で、軽量で強度に優れている。耐火性能は外壁2時間の国基準の認定を取得した。

 基礎部には通常の高層住宅と同様に、免震装置を設置。建物自体を円筒状にすることでどの方向からの力にも同様に耐えられるようにし、放射状に配置した住戸の壁で鉄骨と同等の強度を確保した。

 木材を多用する最大のメリットは環境面だ。使う木材の二酸化炭素貯蔵量は約1678トンで、約100平方メートルの一般住宅の100棟分になる。木材特有の断熱性の高さから、冷暖房費の削減にもなるという。

 同社が木造の高層住宅の検討を始めたのは4年前。顧客に提案をしても「前例がない」という理由で実現にこぎ着けることはできなかった。このため、自社ビルという形で、計画を進めることにしたという。

 事業費は高層部分だけで約17億円。商業施設などを含めると約21億円に上る。高層部の賃貸マンション収入だけでは赤字で、環境に優れた建築に対する国の補助制度などを合わせて収支バランスが取れる見込み。

 同社はプロジェクトの詳細を同業者にも公開している。西峰秀一社長は「新築住宅が大きく増えない中、国産材の使用を増やすためには木造の高層住宅の技術を確立する必要がある。まだ採算は厳しいが、地元企業でもこんな夢のある事業ができるということを知ってほしい」と話す。

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