TBSは1月4日、同社の番組出演者への誹謗中傷を止めるよう注意喚起した。正月特番に出演していた有名シェフがコンビニのおにぎりの試食を拒否し、味を判定しようとしていたことから、Twitterなどで批判が相次いでいた上、一連の騒動とは無関係のレストランにも誹謗中傷の被害が及んでいたため。同社は「番組出演者、番組とは無関係のお店に対しての誹謗・中傷、迷惑行為は止めてほしい」としている。

 1月1日放送の「ジョブチューン元日SP」では、セブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの大手コンビニ3社の商品開発担当者が出演。3社の社員が選んだ一押し8商品、計24品を有名料理人が試食し、その味の「合格」「不合格」を決める企画を放送した。

 このうち、ファミリーマートの「直巻和風ツナマヨネーズおむすび」に対し、出演者のイタリアンシェフの小林幸司氏は「食べてみたいという気にならない」と発言。各出演者が試食した上で、味を評価する中、小林シェフは試食せずに合否判定を下そうとした。

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同番組でレビュー対象となったファミリーマートの商品一覧(出典:同番組公式Instagramアカウントの 投稿)

 最終的に一口食べ、不合格の判定を下した一方で、小林シェフは「(米の)ツヤとふっくらを出すために、ツナと一緒に炊くといいのではないか」などアドバイスする場面も。ただ、番組では小林シェフの発言にファミリーマートの女性担当者が涙ぐむ場面も放送された。

 放送後、Twitterでは一連の言動を巡り「食べてから味で判断するのが料理人。職務放棄だ」「料理人以前に人として問題がある」「イタリアンシェフにおにぎりの味を判断させるのがそもそもおかしい」などの意見が出た。YouTubeのチャンネル登録者数256万人を誇る、料理研究家のリュウジ氏は「食べ物を作るプロが食べ物を作る企業をボロクソに言う企画がどうしても好きになれない。プロの目線ではなく、多くの一般ユーザーの目線が最重要だ」との見解を示し、番組の企画自体に疑問を呈した。

 小林シェフが経営するイタリアンレストラン「フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ」のグーグルのレビュー欄には、一時誹謗中傷の書き込みが相次いだ(現在は削除され、書き込みを確認できない)。

 さらに事態はエスカレートし、同じ小林姓のシェフが経営するイタリアンレストラン「リストランテ小林」にも誹謗中傷が相次いでいた。被害を受けた同レストランのシェフは「ジョブチューンご出演の小林幸司シェフと当店は全く別のお店です。当店のシェフは『小林孝好』です」とし、一連の騒動とは無関係であると強調。「根拠のない批判や嫌がらせについては、今後法的な手段を取らせて頂きます」とツイートしている。

炎上した際は事後対応が重要
 企業の炎上対策などを手掛けるシエンプレ デジタル・クライシス総合研究所が発表した「デジタル・クライシス白書2021」によると、2020年の炎上件数は前年比15.2%増の1415件。このうち法人などの炎上件数は426件(同9.2%増)だったという。

 調査では炎上後の事後対応を「重視する」とした回答が5割を超えた。同社は「炎上が発生してからメディアが放送・記事化するまでのス ピードは大幅に短縮され、企業は今まで以上に対応スピードを求められるようになっている」とした上で「事後対応で大事なのは、影響範囲を正確に見極め、 SNSに投稿される内容を一つひとつ丁寧に分析して世論を正確に把握することだ」としている。

 炎上はいつ発生するか予測できないが、炎上時は迅速な対応と、正確な状況把握が必要となりそうだ。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2201/05/news124.html