中国のコロナ対策が「世界最大のリスク」に浮上した。北京冬季五輪まで1カ月を切り、国内の一部都市をロックダウン(都市封鎖)しているが、米調査会社は封じ込めに失敗する可能性が高く、国内外の経済混乱を招くと指摘した。封鎖地域では食料不足や当局者による暴行騒動などに発展、住民の不満も噴出している。

米調査会社ユーラシア・グループが年初に公表した今年の「10大リスク」をまとめた報告書で「最大のリスク」に挙がったのが、中国の「ゼロコロナ」政策だ。「幅広いロックダウンと効き目が限定的なワクチン」でオミクロン株との戦いを強いられていると説明。「当初の成功と習近平国家主席のこだわりで、方針転換は不可能になった」と分析する。

その上で、感染拡大の封じ込めに失敗する可能性が高く、政府による社会・経済統制の強化とそれに対する不満の増大を予測。中国経済の低迷が続き、世界的なサプライチェーン(供給網)への打撃を深刻化させ、インフレのリスクを増大させると警鐘を鳴らした。

中国製ワクチンについては効果の低さも指摘されており、国内各社が、ファイザーやモデルナと同タイプのmRNAワクチンの製造・開発に着手している。前出の報告書は、混乱状況が「少なくとも自国製のmRNAワクチンを国民に行き渡らせるまで、最短でも今年末まで」続くとの見方を示した。

昨年12月下旬からロックダウンを行っている陝西省西安市では、食料品や生活必需品の不足、医療サービスの受診などに影響している。

同市内で痛みを訴えた妊婦が陰性証明の期限が切れていたため病院に入れず、寒い屋外で約2時間待たされた末に大量出血、死産したと報じられ、住民らの非難が噴出した。保健当局は謝罪し、病院を受診する人に48時間以内の陰性証明の提示を義務付けていた措置をやめると発表した。

中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では、ポータブルゲーム機とインスタントラーメンに中華まん、白菜やにんじんなどの野菜と生理用品などを物々交換する映像も投稿されている。

防疫担当の職員が住民を暴行する映像もSNSに投稿されたほか、ロックダウン前に住民が脱走したことも報じられた。

河南省禹州市でも3日からロックダウンが行われている。関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は「重症呼吸器症候群(SARS)流行当時、1人の感染者のみで住居を封鎖するなどした対策の成功体験があるのだろうが、今後はロックダウンだけで抑え込みはなかなか難しい。(mRNAなど)欧米のワクチン導入も検討すべきではないか」と語った。

評論家の石平氏は「習政権は従来の対策と自国産のワクチンについてメンツを重視するあまり、なす術がない。今後はコロナの『ゼロ』対策ではなく、強権的抑圧によって国民の不満や批判の『ゼロ』対策をするしかないのではないか」と皮肉を込めた。

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