[キエフ/モスクワ 1日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は1日、西側諸国がロシアをウクライナを巡る戦争へ誘導するためのシナリオを意図的に作り、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の可能性を含め、ロシアの安全保障上の懸念を無視しているとの批判を展開した。

プーチン氏はロシアを訪問したハンガリーのオルバン首相との共同会見で「ロシアの基本的な懸念が無視されているのは既に明白だ」と強調。ウクライナ情勢について公の場でコメントしたのは昨年12月23日以来だった。

ウクライナがNATOに加盟し、ロシアが2014年に併合したクリミアの奪還を試みると想定した場合、「ロシアはNATOと戦争を始めるのか」と問い掛け、誰もこのシナリオを考慮に入れていないと主張した。

ロシアはウクライナとの国境沿いに10万人を超す軍部隊を集結させており、ウクライナ侵攻の可能性について西側諸国は懸念を強めている。ロシアは侵攻の可能性を否定しているが、安全保障上の要求が受け入れられなければ、何らかの軍事行動を取る可能性があると警告している。

<西側に安保の原則尊重訴え>

一方、ロシアのラブロフ外相はブリンケン米国務長官との電話会談で、1999年の欧州安保協力機構(OSCE)首脳会議で採択された安保憲章にある、他国の安全保障を犠牲にして自国の安全保障を強化しないとの原則を尊重するよう求めた。OSCEには米国やカナダなども加盟している。

ラブロフ氏は、この点に関するさらなる協議の必要性をブリンケン氏が認めたと指摘。一方で米国務省は、ブリンケン氏がロシアにウクライナ国境から部隊を撤退させるよう求めたと説明した。

同省高官は、ブリンケン氏がラブロフ氏に対し、「プーチン大統領が戦争あるいは政権転覆を真に意図しないならば、今こそ部隊と手厚く配備した兵器を撤収し、真剣な協議を始める時になると伝えた」と述べた。

ブルームバーグの報道によると、米国はロシアに対し、特定の基地に配備されているミサイルに関する情報を提供すれば、ルーマニアとポーランドのNATO基地に巡航ミサイル「トマホーク」が配備されていないことを確認する方法を提供する考えを伝えた。

ホワイトハウスと国務省からコメントは得られていない。

プーチン氏は米国の主な関心事はウクライナの安全保障ではなく、ロシアの抑え込みだと主張。「ウクライナはこの目的を達成するための道具でしかない」とした。

「さまざまな異なる方法で目的を果たせるが、ロシアを何らかの軍事紛争に誘導し、欧州の同盟国の協力の下で現在協議されている厳しい対ロシア制裁を発動するという道筋が描かれている」と語った。

一方、ハンガリーのオルバン首相は共同記者会見で「現在見られる立場の違いは埋めることができると確信した。平和とロシアの安全を保証し、NATO加盟国も受け入れ可能な合意に至ることが可能だ」と表明した。

<英首相はウクライナ訪問>

ジョンソン英首相は1日、訪問先のウクライナでゼレンスキー大統領と会談。プーチン大統領は欧州における冷戦後の安全保障体制を塗り替えるために、ウクライナに銃を突きつけていると批判した。

「ロシアは後ろに下がり、外交的な道筋を選択するべきだ」と述べた。

ゼレンスキー氏はウクライナ軍部隊を3年間で10万人増やす命令に署名。ただ、議員らに対し「これは戦争が近いからではない。早期に、そして将来的にウクライナに平和が訪れるよう図るためだ」と説明した。

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-idJPKBN2K704R