元首相5人が欧州連合(EU)欧州委員会委員長宛てに送った書簡に、東京電力福島第1原発事故の影響で「多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ」との表現があった問題で、福島医大放射線医学県民健康管理センターの神谷研二センター長は4日、福島民友新聞社の取材に「このようなメッセージが出されたのは大変残念。誤解や偏見に結び付く可能性がある」と考えを語った。

 センターは同日、ホームページに「放射線事故に伴う誤解や偏見の払拭(ふっしょく)は極めて重要な課題だ」とする文章を日本語と英語で掲載した。この文章では、県民健康調査検討委員会が、現時点で甲状腺がんの発見と放射線被ばくとの関連は認められないとの見解を示していることや、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR=アンスケア)が、甲状腺がんを含む発がん率の上昇や将来の遺伝的な影響を危惧する状況にない旨の報告をしていることを紹介している。

 神谷センター長は、原発事故による放射線とがんを結び付けるエビデンス(証拠)がないことを指摘した上で、「学術論文などを通じて国内外に情報発信しているが、福島についての正しい情報が十分伝わっていないと感じる。情報発信を愚直に繰り返していかなければならないと思っている」と述べた。

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