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ウクライナ東部ハリコフで武器を手に警戒するウクライナ軍兵士 MAKSIM LEVIN-REUTERS

<ロシアの侵攻を受けて、反撃を決意する市民たちの希望と勇気は燃え続けることができるのか? ウクライナ第2の都市ハリコフの今を現場からレポート>

ジーンズにジャケットを羽織った地元の男たちが、ウクライナ東部の都市ハリコフの街角で車からカラシニコフ銃と弾薬の木箱を降ろしていた。2月24日にロシアがウクライナへ侵攻を開始してから数時間。抵抗は既に始まっていた。

「怖くないとは言わないが、私たちの運命だ」と、機械工の男(安全上の理由から匿名)が言った。「ロシア人が待ち遠しいよ、地獄へようこそ」。また「私たちは戦闘に志願している」と、黒いスニーカーにスエットパンツの男が言う。「ウクライナのためなら死んでも構わない」

2014年と15年にドンバス地方でウクライナ軍と共に戦ったことがあるという数人の男は、私たちの話が終わるのを待って、武器を近くの建物に隠しに行った。

ウクライナ全土の複数の戦線でロシアが破壊的な電撃戦を仕掛ける数日前から、西側諸国はレジスタンスをどのように武装させるかを検討していた。毎年2月に各国首脳らが外交と安全保障について議論する国際会議「ミュンヘン安全保障会議」が18日から開催されており、イギリスのボリス・ジョンソン首相は19日に、「電撃戦の後は報復と復讐と反乱の長く恐ろしい時期が続くだろう」と述べた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、武器を手に戦う意思のある市民に決起を呼び掛けた。

ハリコフの街角で私が出会った小さなパルチザンは、地下レジスタンス活動の始まりなのだろう。

「素晴らしい気分だ。復讐の時が来る」

ウクライナ第2の都市ハリコフでは、ロシア軍の襲撃に備え、至る所で通常戦力の配置が進んでいる。たくさんの若いウクライナ兵が、市内に通じる重要なルートで陣地を確保しようと、通りを急いでいた。その1人アレクサンデルは、戦いが迫っていることが楽しみだと語った。「素晴らしい気分だ。われわれの復讐の時が来る」

こうした勇ましい虚勢とは対照的に、市民はロシアの冷酷な攻撃の矢面に立たされている。ウクライナ当局によると24日だけで57人が死亡、169人が負傷。ハリコフ近郊で砲撃されたアパートでは、少年が犠牲になった。

青空と迫り来る爆弾の下、アラ・ガラクティヨノワ(80)はハリコフの自由広場の石畳に立ち、通り過ぎる車に手を上げて乗せてもらおうとしていた。ロシアとの国境近くにある村から、激しい爆撃をくぐって1時間前にたどり着いた。ハリコフ市内に住んでいる姉の元に、何とか避難したいと思っている。

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郊外で攻撃位置に就く兵士ら MAKSIM LEVIN-REUTERS

「恐ろしかった」と、寡婦のガラクティヨノワは言う。「こんなことは聞いたことも見たこともない」

24日の残虐な出来事は、彼女にとって自分の国とロシアの結び付きを断ち切るものだった。「以前はいい人たちだと思っていた。今は、彼らは戦争がしたいだけ」

この瞬間にも多くのウクライナ人がロシアの侵攻から逃れようと移動しており、近隣諸国は避難民の流入に備えつつある。空爆はウクライナ全土に及び、国連難民機関の推計によると、10万人以上が荷物をまとめて住む家を離れ、国内の他の地域を目指し、あるいは国を出ようとしている。

EU圏との国境には長い列が伸びている。スーツケースを抱え、ポーランドやハンガリーに歩いて渡ろうとする人もいる。