世界中でブームを起こしているK−POP。音楽チャートを席巻し、各国に熱狂的なファン集団(ファンダム)が作られている。
そんなK−POPに魅せられ、日本から韓国に渡る少年少女たちがいる。デビューを目指す若者や、夢をかなえて活動する若者らの姿を、前編と後編に分けて伝える。【大野友嘉子/デジタル報道センター】(後編はこちら)

「練習生」になるため
 韓国のボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」やガールズグループ「TWICE」のポスターやうちわが店先を彩る東京・新大久保。コリアンタウンとして知られ、K−POPの一大発信地にもなっている。

 1月中旬、JR新大久保駅近くのビルにある「GAZA K−POP ダンススタジオ」を取材に訪れると、ゆったりとしたジャージーを着こなした男女が音楽に合わせてリズムを取っていた。ここには韓国の芸能界を目指している少年と少女が70人ほど通う。

 GAZAは、K−POPアーティストのダンスに特化したレッスンを行っている。初心者から上級者向けクラス、そしてアイドルを目指す「アイドルアカデミークラス」がある。

 「20歳までに韓国で練習生になることが目標です」。そう話すのは、アイドルアカデミークラスに通う高校3年の家冨彩未(いえとみ・あみ)さん(18)。週4日夕方〜夜のレッスンに加え、レッスンのない日も自主練習のため可能な限りスタジオに足を運ぶ。共にアイドルを目指す、別の学校に通う同学年の大沢京香さん(18)と、TWICEの曲に合わせて踊って見せてくれた。

 「練習生」とは、韓国の芸能事務所が実施するオーディションに合格し、デビューを目指すアイドルの卵のこと。練習生に合格して韓国に渡航すると、現地の芸能事務所にダンス、歌、語学などのレッスンを付けてもらい、事務所が定期的に行う審査に合格すればデビューできる。受からなければ練習生として再チャレンジするか、事務所を退所することになる。

 家冨さんたちは、この練習生になるため、オーディションに向けて日々研さんしている。

一糸乱れぬダンス 世界での活躍に憧れ
 家冨さんが韓国のアイドルを目指すようになったきっかけは2017年、BTSを特集したテレビ番組だった。「カル群舞」(韓国語で「カル」は刃物)と呼ばれる、刃物のような切れ味の、指先まで動きをそろえた一糸乱れぬダンスに引き込まれた。

 もともと幼いころからチアダンスをしており、俳優になりたくて日本の芸能事務所のオーディションを受けていたため、芸能やダンスの素養はあった。「K−POPのレベルの高いダンスは、自分の理想に近いと感じました」と振り返る。

 K−POPスターのグローバルな活躍も魅力だ。自身はインターナショナルスクールの幼稚園に通い、アイドルを目指す前は、高校の間にカナダかオーストラリアに留学するつもりでいたほど英語が得意。「芸能人に限らず、国内市場にとらわれない…