元暴走族リーダーの宮城正和さん(34)=浦添市=は18歳で初めて少年院に入ると、規則正しい睡眠と食事で心が安らいでいった。「1人暮らしで家賃の取り立てがうるさく、ゆっくり眠れなかったから」

「非行がエスカレートする前に大人が手を差し伸べる必要がある」と話す宮城正和さん

 心が落ち着くと、ふと「更生すると約束してくれ」と泣いた警察官を思い出した。

 〈立ち直る最後のチャンスかもしれない〉-。そう思い、勉強を始めた。2桁の足し算から。アナログ時計も読めない自分に気付いた。「当時の学力は小学2年レベル」。家庭が壊れ始めた時期から学びもストップしていた。

 真面目な姿勢を指導教官に認められ、県外の矯正施設で大型特殊免許を取得した。少年院で1年半過ごすと、免許を生かして水道管を埋設する仕事に就いた。

 「堂々と原付で通勤でき、仕事に就けるありがたさを感じた」。二人の警察官にあらためて感謝の念が湧いた。

 8年前にバイクショップを開いた宮城さんはいま、コロナ禍で増える困窮世帯に、個人で食料を配給している。SNSを駆使して農家や企業から食材を集め、困っている人に直接届ける。支援を通じて家庭の事情で孤立した子どもたちとつながり、話し相手にもなる。

 かつての自分のように不安定な子が少なくない。非行に走らせないため「大人が『気に掛けているよ』とメッセージを発することが大事」と語る。「親以外に話せる大人がいるといないとでは違う。自分も経験しているから分かる」

 成人年齢引き下げに伴う改正少年法では18、19歳の犯罪が厳しく扱われる。起訴後に実名報道が可能になるのはその一つだ。

 「実名報道は一定の非行少年たちの犯罪抑止になる」と思う半面、「少年たちは法律を知らない。中学生のうちに少年法を教えるのも必要ではないか」。早い段階で非行の芽を摘む重要性を強調した。(社会部・城間陽介)

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