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走行不能に陥ってウクライナ領内に遺棄されたロシア軍所属の「パーンツィリ-S1」(画像:ウクライナ軍参謀本部)

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KamAZ製8輪トラック搭載の装輪タイプ(画像:ウクライナ軍参謀本部)

 ロシアは2月24日、ウクライナへの侵攻を全面的に行った。プーチン大統領の作戦は明らかに首都キーフ(キエフ)を数日で陥落させ、ゼレンスキー大統領たちを追放してウクライナをロシアの強い影響下にすることだったのだろう。

 しかしウクライナ軍の予想外の抵抗で、ロシア軍の前進はキーフの北方20〜30kmで停止することになる。そのためロシア軍は、増援部隊と補給物資を出撃基地である隣国ベラルーシから前線に多数派遣した。しかしその部隊が長さ64kmにわたり、大渋滞を起こしてしまい、部隊の増強も物資の補給も停滞してしまった。

 人工衛星からの写真で長々と伸びたロシア軍の車両、戦闘部隊と運送部隊が混在しているのが分かった。ただその原因については、さまざまな説が論じられていた。

 そんななか、SNS上で拡散した多くの写真を見た世界の軍用タイヤのプロから、

「ロシア軍が使用したタイヤが中国製の格安ものだったので引き起こされたものでは」

との指摘が相次いだ。

 国防総省で軍用タイヤのスペシャリストだった人や、軍用タイヤの研究家で現在も国防省のアドバイスを行っている人物が複数のアメリカメディアに語っている。彼らはSNS上の写真だけでなく、アメリカ国防省からの写真も提供を受けているようだが、その詳細は不明だ。

中国製の安いタイヤの性能不足

 専門家の3人の主張はほぼ同じなので、簡潔に取りまとめた。

 SNSで公開された中で有名なのは、短距離地対空ミサイル戦闘車両の「パーンツィリ-S1」で、機関砲とミサイルを「KamAZ-6560」という8輪トラックに装着したもの。写真では後輪が完全の泥にはまり、前輪のふたつが真横に曲がっているのが分かる。

 このトラック自体の重量は20tで、総重量は30tを超える。専門家は装備しているのが中国製の軍用タイヤ「Yellow Sea YS20 tires」(中国名:黄海 YS20)だと断定し、このタイヤが“戦場で極めて評判の悪いタイヤ”であると評している。

 このタイヤだが、実はフランスのミシュラン社の軍用タイヤ「Michelin XZL war tires」の劣化コピー版だとという。ふたつのタイヤを画像で比較すると確かにブロックパターンはそっくりだ。恐らく正式なライセンス無しでコピーしたのだろうが、ブロックパターンはコピーできても、コピーしきれなくて性能が正式版よりだいぶ劣るようである。

 軍用タイヤの専門家たちは、ソマリアやスーダンなどで中国やロシアから輸入されたり、持ち込まれたりした中国製軍用タイヤを調査した。そうしたところ、乾燥路ではそこその性能を発揮するようだが、泥沼状態だと性能が大きく落ちるという。

 それゆえ、ウクライナでの南部ではそれほど大きな問題を生じていないようだが、既に春を迎えて凍結土が溶け出して泥沼化したキーフ周辺の北部の道では、簡単に泥沼で沈下して動けなくなったようだ。