「国家は滅亡する。あるときはリーダーの殺害によって、またあるときは事故によって。そもそも存在するかどうか疑わしいものもある。戦争や革命でぱっと現れたかと思うと、いつの間にか地図から消えていたものもある」――オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻する作家、ギオデン・デフォー氏の著書『世界滅亡国家史』は、英米で絶賛されベストセラーとなった。同作がこのたび、日本上陸する。

今回はその中から、「国家衰退の原理」について一部を抜粋して紹介したい。

地図から消えた48か国

・「兵士」50人で不法建国…ソノラ共和国

・勘違いで「素人」に領土割譲…サラワク王国

・「暇」すぎて滅亡…エルバ公国

・謎の「住民投票」でロシア編入…クリミア共和国

・「モンゴル」なめすぎて滅亡…ホラズム

ギオデン・デフォー氏は、本書に登場する48か国の滅亡理由をやや不躾な言葉で表現している。その理由を、「悲しい最期を迎えた国家の物語には、命知らず、レイシスト(人種差別主義者)、詐欺師、常軌を逸した人、脱税者、または間違い、嘘、非常識な計画、その他『ばかげた失敗』と言っていい数々の愚行が登場する」と語る。

クリミア共和国はなぜ消えた?
本書では「クリミア共和国」についても触れられている。クリミア共和国は人口約200万人、首都はシンフェロポリ、言語はロシア語、ウクライナ語、クリミア・タタール語が使用されていた。

ギオデン・デフォー氏は、同国の滅亡理由を「比較的天気がよかった」からとしている。

「何世紀もの間、クリミアでは征服と再征服が繰り返されてきた。落雷で炎上する可能性がある海に囲まれたクリミア半島は、地政学上の断層線に位置しており、悲劇が約束された土地だ。ヘロドトスによると、最初の入植者はキムメリオス人だったという。スキタイ人に侵略されたときに集団自殺を選ぶほどの、非常に誇り高い人々だ。スキタイ人のあとにギリシャ人が、続いてタウリア人、ゴート人、キプチャク人、アラン人、ルーシ人、ハザール人、アルメニア人、モンゴル人、ジェノヴァ人がこの地を支配した。ロシアの皇帝にとって、クリミアは、海水浴をしても顔が凍りつくことはない帝国内でも珍しい場所であり、リラックスできる別荘地だった」とギオデン・デフォー氏は続けている。

そして、国家存亡の過程とともに、地政学的理由から数々の支配者がこの地を手に入れるべく画策した歴史を踏まえて、「クリミアが新たな支配者の手に渡るのはこれが最後だと決めつけるのは早計だろう」と締めくくっている。

このように、本書でははるか昔に滅んだ国家ばかりでなく、クリミアのような記憶に新しい地域についても触れられている。

国家滅亡の背景を「国が生まれる」とは?「国がある」とは?「国が消える」とは?といった視点で読み解いていくのである。