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記者会見で事件への思いを語る金秀煥さん(左端)=京都市中京区で2022年5月9日午後2時26分、千金良航太郎撮影

 在日コリアンが集住する京都府宇治市のウトロ地区で昨年8月、民家が放火された事件で、非現住建造物等放火罪に問われた被告の初公判が16日に京都地裁で開かれる。ウトロ地区の地元住民と弁護団は9日、京都市内で記者会見を開き、「人種差別目的のヘイトクライム(憎悪犯罪)だと裁判で認定され、差別的動機が量刑に考慮されるべきだ」と訴えた。

 会見で豊福誠二・弁護団長は、ヘイトクライムは被害者だけでなく、同じマイノリティー(少数者)集団に対しても恐怖を与えると指摘。国内の刑事裁判では、人種差別を動機として量刑が加重された例がないとして、司法の場で検察官が立証した上で、差別的動機だと裁判所が認定し量刑にも反映されるべきだと主張した。

 日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入。2016年6月にはヘイトスピーチ解消法が施行されたが、罰則や禁止規定のない理念法にとどまっている。

 地区では22年4月に「ウトロ平和祈念館」が開館したが、21年9月の起工式直前に放火事件が起き、祈念館に収蔵される予定だった看板などの資料も焼けた。

 祈念館の金秀煥(キム・スファン)・副館長(46)は会見で「尊厳が回復されると思っていた矢先に差別と偏見・憎悪によって放火が起き、複雑な心境だった」と振り返った。裁判については「マイノリティーがおびえることなく安心して暮らせる社会になるよう、司法がヘイトクライムを犯罪と判断してくれることが重要だ」と訴えた。【藤河匠、千金良航太郎】

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