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史上最大級の翼竜ケツァルコアトルスの想像図。立ち上がると高さが約6メートルあり、キリンほどの大きさだったと考えられている=きのしたちひろ氏提供

 翼を広げた長さが10メートルとされる史上最大級の翼竜ケツァルコアトルスは、グライダーのように滑空飛行する能力も低かった――。こんな研究結果を、名古屋大や東京大などの研究チームが発表した。航空力学にもとづいて計算したところ、少しは飛べたが、ほぼ陸上で暮らしていた可能性もある。一方、同じ翼竜のプテラノドンは大空を飛び回る能力が高かったという。

 ケツァルコアトルスは、立ち上がると頭の高さが約6メートルになり、キリンに匹敵する大きさだったと推定されている翼竜だ。ティラノサウルスやトリケラトプスなどの恐竜と同じ白亜紀に生きていた。

 巨体のため羽ばたいて飛ぶことは苦手だったが、グライダーのように翼を動かさず、上昇気流に乗って旋回しながら高く舞い上がり、直線状に飛ぶという滑空飛行で長距離を移動できたと考えられていた。

 チームは、滑空能力について体重や翼の長さ、面積をもとに航空力学に基づいて計算。ケツァルコアトルスやプテラノドンといった翼竜と、現生の鳥のカリフォルニアコンドルやワタリアホウドリなどを比べた。

 ケツァルコアトルスのデータは、滑空飛行が得意だったとの説を唱える研究者が推定した体重259キロ、翼を広げた長さ9・64メートル、翼の面積11・4平方メートルを使って計算すると、現生鳥類に比べ、2倍以上強い上昇気流が必要という結果になった。

 プテラノドンは、体重36・7~18・6キロ、翼を広げた長さ5・96~5・34メートル、翼の面積1・99~2・26平方メートルで計算すると、上昇気流に乗って空に飛び上がり、滑空する能力が高いことがわかった。

 映画や図鑑のなかでケツァルコアトルスは大空を飛び回る姿で描かれることが多い。名大の後藤佑介研究員は「古生物が好きな人たちの夢を壊してしまうかもしれないが、まったく飛べなかったというわけではない。ただ、長距離を飛ぶのは難しかったのではないか」と話した。

 後藤さんや名大の依田憲教授、東京大の佐藤克文教授らの研究チームが、米科学アカデミー紀要の姉妹誌に発表した。

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