「プーチンの戦争」に嫌気が差しているのか、ロシア国内のスーパーや食料品店で万引が急増している。

 ロシアの独立系経済紙RBC(15日付)によると、食料品や衣料品などを扱う店を対象に、小売業と連携する顔認証システム開発会社の盗難検知データを分析したところ、今年2~4月の3カ月間に1店舗平均130件の盗難が発生していたことが判明。前年同期比18%増だという。

 食料品店では商品がカゴと一緒に盗まれるケースが多発。トレンドはセルフレジを悪用した万引で、主に狙われた商品は上位から菓子類(19%)、ソーセージ(16%)、アルコール類(14%)、チーズ(13%)、コーヒー・ココア(7%)。被害額は平均1500ルーブル(約3000円)だった。

 ロシアの軍事侵攻が始まったのは2月24日。万引が増えた時期と重なる。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)がこう言う。

「軍事侵攻以降、ロシア国内ではウオッカが飛ぶように売れたといいます。取られた商品のうち、アルコールが上位なのも納得です。市民は戦争の犠牲者が出るにつれてつらい思いや、プーチン大統領への反発を抱き、お酒を飲まないとやっていられないのでしょう。もちろん品薄や物価高騰も万引急増の要因だと考えられますが、『売っているうちに盗んでしまおう』と考える人がいても不思議ではありません。ロシアには『バレなければドロボーではない』という独特な風土がありますから。万引は立派な犯罪ですが、市民からすれば、国家予算をオリガルヒ(新興財閥)や愛人に横流ししているプーチン大統領も『ドロボー』。責められるいわれはない、という感覚ではないか」

■厳しいはずの警備員も目をつぶっている?

 全体主義に見えるロシアも、足元の秩序は揺らいでいるようだ。

「そもそもロシアのスーパーは、商品バーコードを読み込んだ時の値段が値札と違ったり、店員がお釣りの代わりにチューインガムを渡したり、割と無秩序ですが、数年前にモスクワに行った時、スーパーの出入り口に立つ警備員の厳しさが印象的でした。少しでも怪しい人がいたら、カバンの中身を調べ、買った商品とレシートを1つずつ照らし合わせて、チェックしていたほどです。万引が増えているということは、警備員も目をつぶっているということでしょう」(中村逸郎氏)

「プーチンの戦争」に市民もウンザリしている。

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