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ウクライナが16日、攻防が続いていた東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所をめぐる戦闘を停止させた。背景には、マリウポリで露軍を足止めした間に、最前線の東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)や南部で防御線が構築され、一部では反攻の準備が整ったとの判断がある。マリウポリ市内はすでに露軍に制圧され、市が陥落しても戦況への影響は限定的だとみられる。損害が広がる露軍が今後、占領地域を拡大できるかは見通せない。

ウクライナ軍参謀本部によると、露軍はマリウポリ制圧に侵攻戦力の約4分の1から5分の1に当たる17の大隊戦術群(計2万人規模)を投入。同市では民間人の避難先や病院も無差別に露軍の激しい攻撃にさらされた。

これに対し、同市を本拠地とする「アゾフ大隊」などで構成するウクライナ部隊が防衛戦を展開。露軍を2カ月半にわたってくぎ付けにした。マリウポリはウクライナの抵抗を象徴する戦地となったが、同参謀本部は17日、「予備役招集や部隊再編成の時間を稼げた。いまや最も重要なのは籠城部隊の命を救うことだ」と強調した。

露軍はマリウポリ市内の制圧後、部隊を再配置。同製鉄所を包囲する兵力は現在、2千人規模とされる。ウクライナ側はこの程度の兵力が他の戦線に差し向けられても大勢に影響はないと判断したもようだ。

一方、露軍にとってマリウポリの完全掌握は、東部の親露派支配地域と2014年に併合した南部クリミア半島を陸路で結び、海上交通の要衝であるアゾフ海の支配権も確立できる一定の「戦果」となる。

露軍は現在、主目標とするドンバス地域の制圧に加え、ウクライナの沿岸地帯全域を占領することを目標としているとされる。そのために南部ミコライフやオデッサに攻撃を続けているが、反撃を受け損害が拡大。英国防省は露軍が既に戦力の3分の1を失ったと分析している。

ドンバス地域でも露軍はここ数週間、わずかな前進しかできていない。東部ハリコフ周辺ではウクライナ軍が反攻を開始し、露軍は後退を迫られている。マリウポリなどに戦力を分散させている間に、米欧から供与された装備でウクライナ軍が増強されたことが主な要因だ。露軍はマリウポリ掌握後も作戦を継続する構えだが、一進一退の攻防が続くとみられる。

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