「慰安婦」報道で根拠なき攻撃を受けた元朝日新聞記者、植村隆さんの闘いを追ったドキュメンタリー映画「標的」が27日まで、那覇市の桜坂劇場で上映されている。西嶋真司監督と植村さんが16日、取材に応じ「国はうそをつき、メディアと国民をコントロールしようとする。そのことを一番知っている沖縄の人々に見てほしい」と語った。

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「標的」の西嶋真司監督(左)と植村隆さん=16日、沖縄タイムス社

 植村さんは1991年、元慰安婦の韓国人女性の被害証言を報道。その後他社も続いた。週刊文春が2014年、植村さんの記事だけを「捏造(ねつぞう)」などと問題視し、バッシングが始まった。

 教授への就任予定は、大学に抗議が殺到して立ち消えに。高齢の母と過ごす時間を奪われ、長女が通う高校には「殺す」という脅迫状が届いた。映画は、苦悩しながら攻撃に立ち向かう植村さんに密着する。

 RKB毎日放送(福岡市)のディレクターだった西嶋監督は当初テレビ番組を企画したが、慰安婦問題を扱うことに難色を示され、退職して映画化した。「第2次安倍政権以降、慰安婦がタブーになり、メディアの自主規制は危険な水準に達している。形にしないと後悔すると思った」と語る。

 SNSで写真や名前を勝手に公開した相手に損害賠償を求め、勝訴した植村さんの長女もカメラの前に立った。「不当な被害を受けている人のために」と話し、自身も被害に遭いながら父を気遣った。

 植村さんは「厳しい試練の末に得たものは大きい」という。捏造扱いの責任を問うた訴訟では被告のジャーナリストや出版社が免責されたが、「この映画は私が捏造記者でないことを証明してくれている。広めることが、圧力に負けず真実を伝えていく第2ラウンドになる」と話した。(編集委員・阿部岳)

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