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テドロス氏(ロイター)

【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)は24日、ジュネーブで開催中の総会でテドロス事務局長を再選した。テドロス氏は新型コロナウイルスの発生当初、中国寄りの態度を非難されたが、最近は中国の新型コロナ対策を批判するなど対応を変化させつつある。感染症が発生した際のWHOの権限強化が今後の課題となりそうだ。

今回の事務局長選ではテドロス氏以外に候補者は出なかった。英メディアによると、選出に必要な3分の2以上の賛成を得て、再選が決まった。ドイツや米国などが支持したという。

テドロス氏は8月から2期目に入り、任期は5年間。同氏は再選を受け「(新型コロナの)大流行は前例のないもので、学ぶべき教訓が多い。立ち止まることなく、学びながら行動したい」と表明した。

テドロス氏はエチオピア出身で、2017年にアフリカから初めて事務局長に就任した。新型コロナの感染拡大初期、中国の対応を繰り返し称賛して「中国寄り」と批判され、米国のトランプ前政権がWHO脱退を通知する事態に発展した。

しかし、昨年ごろから、テドロス氏の中国への発言に変化が生じた。

WHOが昨年3月末、新型コロナの起源解明のため中国湖北省武漢市で調査を行った国際調査団の報告書を公表した際、テドロス氏は「(中国側から)データが十分に提供されず、広範囲にわたる分析が行われたとは思えない」と不満を表明した。

今月10日には、新型コロナ感染拡大を抑え込む中国政府の「ゼロコロナ」政策について「持続可能とは思えない」と批判。WHOが特定の国の新型コロナ対策を批判するのは異例で中国側は神経をとがらせた。ロイター通信によると、国連はテドロス氏の発言を中国語で交流サイト(SNS)に投稿したが、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」への投稿は直ちに削除されたという。

感染拡大初期の中国当局の対応をめぐっては、WHOの新型コロナ対応を検証する独立委員会が昨年1月の中間報告で「より強力に実施できたはずであることは明白だ」などと非難。欧米など多くの加盟国がテドロス氏の中国への対応に批判を強める中、「テドロス氏は再選の支持を幅広く得るために中国への忖度(そんたく)が過度に疑われる姿勢を改めた」(感染症の専門家)とみられる。

ただ、テドロス氏にはWHOの権限強化に向けた改革実現などの課題が立ちふさがる。

新型コロナが中国で確認された当初、WHOは中国の感染状況を把握しようとしたが、WHOの調査に強制権がないことから中国政府の協力に頼らざるを得なかった。一部の加盟国は、感染症が発生した際、WHOが当該国の同意なしに即座に情報を発信し、現地調査を実施できるように権限を強めることを求めているが、中国の反発が予想される。

https://www.sankei.com/article/20220525-UZIXRBXC4FNELLMJDIFKPW35BU/