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ウクライナのゼレンスキー大統領=22日、キーウ(キエフ)(EPA時事)

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ウクライナのポドリャク大統領府顧問=3月29日、イスタンブール(AFP時事)

 【ロンドン時事】ロシア軍の侵攻にさらされるウクライナと同国を支援する米欧諸国で、停戦をはじめ戦争終結への道筋をめぐる協議が続いている。大枠では、2月24日の侵攻開始前の状態を暫定的に受け入れて停戦し、ロシアとの和平交渉に入る考えと、戦争を継続し、2014年にロシアが一方的に併合した南部クリミア半島を含め全土で主権と領土の回復を目指す原則論とがある。

 ゼレンスキー大統領は先週、地元メディアに、ロシア側がクリミア半島や東部ドンバス地方の一部を支配していた侵攻前の状態を回復できれば、それを当面の「勝利」とする考えを示した。その後、交渉による紛争解決に移行するシナリオだ。

 政府内には異論もある。ポドリャク大統領府顧問は21日、ロイター通信に「ロシア軍はこの国から去らなければならない。和平プロセスが再び可能になるのはその後だ」と述べ、停戦そのものを拒否した。ロシアが停戦を利用し、侵攻拡大のために戦力を増強しかねないことへの不信感が背景にある。軍からもクリミア半島奪還を含む強硬論が出ている。

 ウクライナは過去数週間、この問題をめぐって米欧と水面下の調整を続けているが、米欧側にも温度差がある。英情報筋によると、ドイツやフランス、イタリアなどは「早期停戦の実現が重要で、ある程度の妥協が必要」とする考え。米国とカナダは、当面の措置として侵攻開始前の状態が回復できれば良いとの立ち位置だ。

 これに対し、英国は厳しい姿勢を取る。トラス外相は26日の声明で「ロシアの侵略をなだめることはできない。強さで対抗しなければならない」とし、ロシアへの「容赦のない」対応を訴えた。

 ウクライナの隣国ポーランドも英国に近く、「侵略者(であるロシア)との妥協は論外」とし、クリミア半島を含む全領土回復を主張する。ドゥダ大統領は22日、ウクライナ最高会議(国会)で行った演説で「ウクライナはプーチン(ロシア大統領)の要求をのむべきだ、とする気掛かりな声が上がっている」「ウクライナだけが自国の将来について決める権利を持つ」と述べ、欧米からの停戦「圧力」をけん制した。

 ロシアが停戦に応じるかどうかも不透明だ。ウクライナのクレバ外相は25日、訪問先のスイス・ダボスで「ロシアは戦争に敗北する一歩手前にならないと、停戦には合意しない。100%間違いない」と述べ、ロシアが外交解決を受け入れることは当面はないとの見通しを示した。

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