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BBCのクライヴ・マイリー記者(右)による取材を受けるロシアのケリン駐英大使

ロシアのアンドレイ・ケリン駐英大使は28日、BBCの取材に応じ、ウクライナでロシアが戦術核兵器を使うとは思わないと話した。

ケリン駐英大使は戦術核兵器の使用に関するロシア軍の規則はきわめて厳密で、ウクライナで起きている紛争のような事態で使う決まりになっていないと話した。戦術核兵器は主に、ロシア国家が存亡の危機にさらされている場合に使用する決まりだという。

「現在の作戦とは何の関係もない」と、大使はBBC番組「サンデー・モーニング」による取材で話した。インタビューはイギリス国内で、現地時間29日午前9時(日本時間同午後5時)に放送される。

2月24日にウクライナ侵攻を開始して間もない2月27日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、戦略的核抑止部隊に「特別警戒」を命令した。諸外国はこれを警告と受け止めた。

プーチン大統領は西側諸国と北大西洋条約機構(NATO)がロシアに「非友好的な行動」をとり、「不当な制裁」を科したからだと説明。しかし、イギリスのベン・ウォレス国防相は当時、ロシアの当初の思惑とは異なりウクライナ制圧が遅れているため、軍事作戦の進捗から世界の目をそらそうとして、自分たちの核抑止力を誇示したのだと批判していた。

射程距離がきわめて長く、全世界を巻き込む全面的な核戦争の恐怖を呼び起こす「戦略核兵器」とは異なり、「戦術核兵器」は比較的短距離の目標に対して使用できるとされている。ただし、小型爆弾や戦場で使うミサイルなど、様々な種類の武器が「戦術核兵器」に分類される。

ロシアはこうした戦術核兵器を2000以上保有するとみられている。

戦争犯罪は「捏造」と大使
BBCのクライヴ・マイリー記者の質問に、時には厳しい口調で応酬しながら、ケリン大使はロシア軍が戦争犯罪を重ねているという指摘を否定した。

ロシア軍がウクライナ各地で民間人を攻撃し、首都キーウ郊外のブチャでは多くの市民を虐殺したとされることについて、大使は「捏造(ねつぞう)」だと反論した。

記者に、「なぜロシアはこのような形で戦争を遂行し、戦争犯罪を重ねているのですか」と質問された大使は、「ブチャの市長は解放後、最初の声明で、ロシア軍は街を出て行った、何もかも清潔で落ち着いている、街はいつも通りの正常な状態だと話していた。何も起きていない、道路に横たわる遺体などないと言っていた。しかしその次になると、ともかく……」と答えた。

そこでマイリー記者は重ねて、「では何もかも、でっちあげなのですか?」と質問。「なにもかも捏造で? これほど証拠が集まっているのは、捏造だとおっしゃるのですか?」と追及した。

これに対して大使は、「私たちは、捏造だと考えている。交渉を中断させるために使われているだけだ」と答えた。

ロシア政府は、ブチャの民間人殺害についてこれまでも同様の主張を重ねていた。セルゲイ・ラヴロフ外相は当時、ロシア軍撤退後のブチャに残された遺体の映像は「やらせ」だと述べていた。

しかし、現地入りしたBBCの取材陣に複数の住民が、ロシア軍が家族を次々と処刑したのだと話していた。

人工衛星画像からも、ロシア軍が街を離れる2週間前の時点で路上に複数の遺体が横たわる様子が確認できており、ロシア政府の主張を否定している。

(英語記事 Russia won't use tactical nuclear weapons in Ukraine, says ambassador to UK)

https://www.bbc.com/japanese/61622047