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鹿に張り付けられた搬入伝票を確認する後藤理事長(兵庫県多可町で)

24時間鹿持ち込めます──。兵庫県多可町の鹿肉解体施設は、捕獲した鹿を自由に搬入できるシステムを考案し、受け入れ頭数を増やしている。伝票とカメラを使って無人で記録。狩猟者の利便性を高めることでジビエ(野生鳥獣の肉)としての利用を促進し、自治体による処分費用も削減する。(本田恵梨)

足の伝票・カメラで記録 町の焼却費1/5に

午前5時、1台の軽トラックが捕獲した鹿を運んできた。専用の冷蔵庫に鹿を入れ、伝票に氏名や捕獲場所などを記入して鹿の足に貼り付け、そのまま去っていった。

施設は、ジビエのペットフードを製造する、同町のNPO法人「cambio(カンビオ)」が運営。同町を含む3町から年間約4000頭が集まり、同町で捕獲された個体の8割以上が持ち込まれるようになった。

後藤高広理事長は「活用できる資源を、労力やお金をかけて処分するのはもったいない。受け入れを無人でできるのが利点になっている」と話す。

搬入の様子は監視カメラで記録する。月末に伝票と映像を突き合わせながら搬入数を集計し、各自治体へ送る。正確な捕獲数の把握や捕獲報酬の適正な支払いに役立っている。

2015年に開設した当初、平日の午前8時~午後5時の間で年間100頭ほどを受け入れていたが、利用者から時間拡大の要望が多かった。特に早朝に狩りに出る利用者が多く、施設が開いていないと鮮度を保てず、穴に埋めるなどして処分していたからだという。

町での鹿捕獲頭数は年間約400頭。かつて約300頭ほどは埋めたり焼却したりして処分されていたという。施設の利用者が増え、同町の焼却処分費用も5分の1以下に減った。

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