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機動力に優れているロケット砲システム「ハイマース」/(米国防省から)

 米国がウクライナに新たな兵器を投入する。バイデン米政権が供与を決めたのは、高機動ロケット砲システム「ハイマース」(HIMARS=写真)。1日に発表した約7億ドルの追加軍事支援に盛り込んだ。“シン・ロケット砲”は戦況を一変させるゲームチェンジャーとなるのか。

「ハイマース」は、ウクライナ軍が供与を求めていた「自走式多連装ロケットシステム」(MLRS)の小型版。軍用トラックの荷台にロケットランチャーを搭載している。

■在日米軍も自衛隊との共同訓練で使用
「ハイマースは射程300キロの長距離ロケットを搭載・発射可能ですが、米国はロシア領土内に届く長距離ミサイルは供与せず、プーチン政権を刺激しないように配慮しました。MLRSよりも軽量のため、輸送機で空輸可能で、前線に緊急展開しやすいのが特徴です。日本国内でも在日米軍が中台紛争への軍事介入を念頭に、自衛隊との共同訓練で使っています。対艦攻撃も可能ですが、基本は建造物や敵陣地を狙った対地攻撃。米国が供与したM777榴弾砲よりも射程距離が約2倍長いため、ウクライナ軍はロシア軍の砲弾の届かない安全地帯から、相手の砲兵部隊や陣地を効果的に攻撃できます」(軍事ジャーナリスト・世良光弘氏)

 ウクライナ東部制圧に向け攻勢を強めるロシア軍に、ウクライナ軍は苦戦中だ。激戦の続くルガンスク州セベロドネツクはロシア軍が7割を掌握。同州知事は「市内の重要な社会基盤はほぼ100%破壊された」と伝えている。

 ウクライナ軍は今月から反転攻勢に出る構えだが、「ハイマース」は戦況を変えられるのか。

「米国が供与するのは長距離砲ではないため、ロシア軍の補給路であるクリミア大橋を打ち落とすなど、戦況をガラッと変えるのは難しいでしょう。ウクライナ軍が優勢に持ち込むには、少なくとも3ケタに近い数のハイマースが必要だと考えられます。ただ、セベロドネツクなど要衝都市の攻防戦において、ロシア軍の拠点を叩くことは十分可能です。10両、20両だけでは足りないとはいえ、ロシア軍との火力差を埋められるのは確かです」(世良光弘氏)

 戦場は「重装備VS重装備」の様相を呈している。ますます終わりが見えなくなってきた。

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