理由1:そもそも日本の畜産は遅れているから
日本にはもともと畜産業はありませんでした。戦前から戦後にかけて普及し始め、アニマルウェルフェアに限らず畜産に関する技術は遅れて取り入れられてきました。工場式畜産とて、ライン式の無残な屠畜ラインとて、遅れて入ってきました。今の動物を拘束するむごい畜産技術も昔欧米から取り入れたものでしかありません。

そしてアニマルウェルフェアも同じように遅れています。そしてその遅れは30年、50年とどんどん間が開いていっている状況にあります。たとえばEUでは1974年に屠殺前に動物(当時は豚牛羊ヤギ偶蹄類のみ)を気絶させなくてはならないことが義務付けられていたが、日本はいまでもゆるい規定があるだけで畜産動物に適用されていません。

日本でちょうどアニマルウェルフェアという言葉がかろうじて広まってきた程度というところも半世紀前のヨーロッパのようです。

理由2:日本は畜産物を輸出できないから
日本の畜産物の輸出は非常に微量です。ほぼないと言っても過言ではありません。かろうじて、卵をちかごろ香港に輸出しています。和牛はどうだと言ってくる人もいますが、牛肉の輸入が年間615,409トンであるに対して輸出は4,339トンであり輸入量*1の0.71%にすぎませんし、FAOの統計によれば、世界牛肉トレードの量は8,631,318トンですから、世界市場からはあまり相手にはされるボリュームではありません。

日本は世界市場からほぼアニマルウェルフェアのプレッシャーを掛けられる状況がありませんでした。

中国は違います。タイも、ブラジルも、世界に畜産物を売るため、世界の潮流を捉えています。(輸出が多いことがいいことではありません)

日本は日本に住む人だけを相手に商売していたため、消費者の意識の低さがそのまま、動物のひどい扱いに反映されてしまっているのです。

理由3:屠殺を含む畜産をタブー視して怖がって蓋をし続けるから
動物を殺すということよりも、「命を奪うこと」が嫌いな日本独自の宗教的な態度は、動物を苦しめています。また長らく日本にある人権問題(被差別部落という問題)も、畜産動物の存在を無視し続けた理由の一つです。

しかし、屠殺をタブー視してもその工程がなくなるわけではありません。間違いなく肉という商品、卵という商品、乳製品という商品は動物を殺している証拠であり、自分の口に入れるものでもあるにも関わらず、なぜか人は生産過程を見て見ぬ振りをしたがり、改善もしたがりません。

アニマルウェルフェアに配慮することは労働環境を改善することに直結します。

しかし、現状を知らなければ改善は一切されません。誰かが勝手にしてくれると思っているのだとすれば、甘すぎます。