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セベロドネツクの最前線のウクライナ兵(6月8日)|Oleksandr Ratushniak / AP Photo

 ウクライナ軍が東部で苦戦しているとの情報が聞かれるようになったが、主な原因の一つに弾薬と砲弾不足がある。集中攻撃を仕掛けるロシア軍に対し、ウクライナ側は10分の1程度しか撃ち返せない苦しい状況だ。

◆砲撃はロシアの数分の1
 ウクライナ軍は、弾薬使用量の抑制を強いられている。ニューヨーク・タイムズ紙(6月10日、以下「NYT」)は、「ロシアの大砲は現在、ウクライナの数倍の砲弾を発射している」と報じている。オレグと名乗るウクライナ側の砲術担当は同紙に対し、「砲弾が足りない」「砲弾の供給が追いつかない」と訴えた。数週間前ならば絶えず火を吹いていた砲台も、いまではさほどの頻度で稼働していない。ロシア軍の陣全体に射撃を浴びせることはできず、敵軍の榴弾砲など限られたターゲットのみを狙っている状態だという。

 ウクライナ政府顧問のオレクサンドラ・ダーニリヤク氏は米ワシントン・ポスト紙(6月10日)に対し、ロシアが1日に5万発の砲弾を放っているのに対し、ウクライナ側は5~6千発で反撃するのがせいぜいだと明かした。拡大する武力差に伴い、ウクライナ軍の死傷者も増加傾向にあるようだ。同紙は「全般的な戦争の動向としては、予想外にお粗末だったロシアの失態の一つという形からは変化してきており、揺るぎなく強い軍隊というロシアに有利な方向に確実に傾いている」と分析している。

◆新型、旧型……それぞれの兵器に潜む課題
 北大西洋条約機構(NATO)軍は新型の砲弾を多数ウクライナに提供しているが、現場のニーズとすれ違いが生じている模様だ。ウクライナで国防・諜報組織の副長官を務めるマリアナ・バエスグラ氏は、NYT紙に対し、「新型の武器弾薬はあるが、(発射のための)火器がない」と語った。新型兵器についてはウクライナ兵に使用方法を教育する必要があり、使用までのタイムラグも問題となっている。とはいえ、古すぎる弾薬も問題だ。ある匿名の兵士は同紙に対し、チェコから提供された古いロケット弾の保存状態が好ましくなく、40発中3発しか発射できなかったと明かした。

 ウクライナは主力として使っていたソ連時代の兵器の弾薬をほぼ使い果たし、同様の兵器を持つ東欧諸国でも提供可能な在庫が限られてきている。ウクライナ政府顧問のダーニリヤク氏はワシントン・ポスト紙に、数十キロ離れたロシア軍の居場所はわかっているが攻撃する手段がない、と悔しさをにじませた。

◆戦局は西側の支援内容次第
 今後も西側への依存は続きそうだ。ウクライナ軍諜報部副部長のヴァディム・スキビツキー氏は英ガーディアン紙(6月10日)に対し、「現在のところすべては、(西側が)何を提供してくれるかにかかっている」と述べた。スキビツキー氏は、西側が各国の在庫の10%程度をこれまでに提供してくれたと説明するが、それでも火砲の数ではロシアの10分の1から15分の1という劣勢が続く。

 米シンクタンクでロシア研究主任を務めるマイケル・コフマン氏は、NYT紙に対し、「この戦争は巧妙な策というよりは砲撃の消耗戦であり、すなわち、どちらがより多くの弾薬を持っているかが決定要因の一つとなる」との見解を語っている。

 健闘していたウクライナ軍だが、兵器の数の差によって苦しい状況に陥っている。

https://newsphere.jp/world-report/20220613-2/