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▲釜山市江西区の南海高速道路料金所付近で電気自動車アイオニック5の消火作業を行っている消防士たち。6月4日撮影。/釜山消防災難本部

衝突から3秒で黒煙…現代自EVアイオニック5、火災で「熱暴走」
 今月4日午後11時ごろ、釜山市江西区の南海高速道路西釜山料金所付近で電気自動車アイオニック5がトールゲートに激突し、直後に火災が発生した。車は黒く焦げ付いてボディーだけが残り、ドライバーと助手席にいた同乗者の二人はいずれも車内で遺体で発見された。トールゲート前方の分離帯と衝撃吸収材に正面から衝突した事故だった。

 釜山西部警察署の関係者によると、事故が発生した地点はハイパス(高速道路の電子料金収受システム)ではなく現金払いのゲートで、車の破損度合いからすると高速で激突したとは考えられないという。車に乗っていた二人が衝突の衝撃で死亡するほどスピードは出ていなかったということだ。しかし事故を起こした電気自動車から二人とも脱出できず、消火作業にはなんと7時間もかかった。

■衝突から3秒で火の手が上がる

 二人が脱出できなかった理由は、衝突と同時に車で火災が発生したためと推定されている。警察が監視カメラを確認したところ、事故を起こした電気自動車は衝突から3秒後に車全体が燃え始めた。事故調査官によると、衝突から1-2秒で爆音とともにボンネット付近から火の手が上がり、直後に車内を経て車全体に燃え広がったという。現場に出動した消防士は「事故から15分後に現場に到着したが、その時点で車の内部まで炎が広がっていた」と説明した。

 消防当局と専門家は「電気自動車用バッテリーの温度が一瞬で高温となり、炎が一気に燃え広がる現象、いわゆる『熱暴走』が事故車両で起こったのでは」と推定している。バッテリーが外部からの衝撃で損傷した場合、バッテリーパック内部の温度が摂氏30-40から800度にまで一気に上昇する現象のことだ。バッテリーは小さいセルを単位として整然と並べられ製造されているが、一つのセルで高熱が発生するとすぐ横のセルの温度も上昇し、ドミノのように火が付いていくのだ。国立消防研究院のナ・ヨンウン研究士によると、熱暴走はバッテリーが損傷してからわずか1-2秒で起こることもあるという。


 2020年にソウル市竜山区で起こったテスラのモデルX火災事故の場合、この車のドアハンドルが埋め込み式でドアを開けることができず、救助が遅れ結果的にドライバーは犠牲になった。電気自動車の一部モデルは通常ドアハンドルがドアに埋め込まれており、ドアハンドルを押せば外に出てくる方式を採用している。ところが釜山で火災が発生した現代自動車のアイオニック5は衝突が感知されればドアハンドルが飛び出すように設計されている。つまり二人の死亡原因は車のドアハンドルとは関係がないということだ。国立科学捜査研究院による第1次の司法解剖で二人の胸の骨が折れていたことが分かった。つまり負傷により体が動かせなかったため、迅速に避難できなかった可能性が考えられるという。

■消火作業に7時間も

 今回釜山で発生した電気自動車火災は翌日の午前6時が過ぎてやっと消火作業が終わった。火を消すのになんと7時間もかかったのだ。午前0時には消火したとみられていたが、その後再び車が燃え上がったようだ。

 このように電気自動車火災で消火作業が難しい理由は、バッテリーが鉄で覆われているため消化剤が浸透しないからだ。車全体を巨大な水槽に入れるか、周辺に壁を立ててバッテリー全体を水に浸さねばならない。今回の火災も壁を設置して水を注ぎ、バッテリーだけを水に浸らせたという。これはリチウム・イオン・バッテリー共通の特性で、メーカー固有の製造法の問題ではない。

 電気自動車バッテリーは非常に張力の強い鋼板によって保護されている。自動車メーカー各社は「時速60キロ前後で衝突してもバッテリーは安全」と説明しているが、専門家は「今回の事故から分かるように100%安全とは断言できない」と指摘する。大徳大学自動車学科のイ・ホグン教授は「開発中の全固体バッテリーは熱暴走から安全だが、実際に大量生産されるまでに数年はかかるだろう」「今の電気自動車では安全運転だけが火災から自分を守る唯一の方法だ」と説明した。

イム・ギョンオプ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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