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ロシアのプーチン大統領(左)と中国の習国家主席(北京、2月4日)|Alexei Druzhinin, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

 ロシアによるウクライナ侵攻から4ヶ月を迎えるなか、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が15日、侵攻直後の2月25日以来の電話会談を行った。両国政府から発信された情報によると、両者はウクライナ情勢を中心に議論し、習氏は「外部勢力によって生じた脅威から根本的な国益を守るロシアの行動を支持する」と初めてロシア支持の立場を明確にした。また、習氏とプーチン氏は米欧による非合法な制裁で世界経済が混乱しているとの認識を共有し、エネルギーや財政、工業だけでなく軍事的分野でも連携を強化していくことで一致した。中ロ両国が多極的で公正な国際システムを構築していくことにも触れたという。

◆中ロそれぞれの思惑や本音
 15日の電話会談は和やかな雰囲気で行われたというが、中ロ両国にはそれぞれの思惑や本音があったはずだ。まず、諸外国からの対中非難をなるべく避けたい中国は、これまでウクライナ侵攻でロシア支持を明確にしてこなかったが、最大の課題で長期的に続く米国との戦略的競争を考えればロシアとの安定的関係は必要となる。習氏のなかには、侵攻直後にロシア支持に回ると米欧や日本だけでなく、第3諸国からも対中非難の声が増える恐れがあるので、少し時間が経過してから再度国際関係を眺め、そこから改めてロシアとの戦略的関係を模索していこうという考えがあったように思う。

 一方、プーチン大統領にも狙いがあったはずだ。正直、ウクライナ侵攻でここまでロシア軍が手こずり、フィンランドやスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請し、世界経済が混乱することは想定していなかったと思われる。プーチン大統領としても国際的孤立はなるべく避けたいと思っており、そういう意味で中国との戦略的関係を重視している。そして、プーチン大統領は米中の戦略的競争を当然理解しており、ロシアが中国に接近することを習氏も望んでいるとある意味確信的な思い抱いているはずだ。ロシアにとっても対米欧において中国との戦略的共闘は手段として有益になる。

◆NATO首脳会談に日韓指導者が出席
 今月末にスペイン・マドリードでNATOの首脳会議が開催されるが、同会議に岸田首相と尹大統領が出席する予定になっている。岸田首相は15日の記者会見で、「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないということを訴えていく」との決意を表明したが、根底には中ロに対するけん制網をユーラシア大陸の両面から強化していきたい狙いがあるだろう。一方、尹大統領は、価値観を同じくする日本や米国、オーストラリアなど自由民主主義陣営のなかで韓国が出遅れるリスクを懸念し、同陣営との急速な関係強化を今回の会議出席で内外にアピールしたいはずだ。

 こういった国際関係を見てくると、米欧日韓VS中ロというような構図が今後より鮮明になってくる可能性がある。もちろん、国によって優先順位や距離感が異なり、そうならないよう色々と手探りや政策が行われるはずだが、陣営同士の競争というものは今後より鮮明になるだろう。

https://newsphere.jp/world-report/20220620-1/