https://i.kobe-np.co.jp/news/higashinada/topics/202206/img/b_15419541.jpg
「最も長いうんてい」としてギネス世界記録に認定されたサンシャインワーフ神戸のうんてい=神戸市東灘区青木1

 商業施設、サンシャインワーフ神戸(神戸市東灘区青木1)の広場には、「世界一長い」といううんていがある。かつては船着き場だった岸壁に沿って、直線でおよそ150メートル。およそ、と説明するのには訳がある。2019年4月にギネスブックに認定された公式記録は「149・992メートル」だからだ。なぜこんな中途半端な数字になったのか、聞いてみた。(井上太郎)

 ■復興のシンボルに

 「計画では150メートルになるはずだったんですよ」。運営会社のオートバックスセブン店舗開発部でサンシャインワーフ神戸管理事務所に勤める丸川克也さん(61)は言う。

 丸川さんによると、18年9月、サンシャインワーフは台風21号で高潮被害を受け、半年ほど営業を休んだ。その際、20年度の開業20周年に向けたリニューアルに着手した。「地域の人たちを笑顔にできる復興のシンボルを」と、大型遊具の設置構想が持ち上がった。

 150メートルを超える岸壁の長さに目を付けた遊具メーカーのジャクエツ(福井県)から、「うんていなら『世界一』が狙える」と提案を受け、設置に取りかかった。赤、青、緑の3色でカラフルな見た目のはしご556本には海に近くてもさびにくい素材を使用し、18年12月に完成した。

 「百人乗っても」のキャッチコピーでおなじみの倉庫メーカーもあっと驚く「150人ぶら下がっても大丈夫」な、頑丈なつくりになった。足元には特注の衝撃吸収用マットを敷き、「高い安全意識の中で細かく丁寧に作り込んでもらった」と、スタッフ一同感動の出来栄えだった。

 ■8ミリの誤差

 そして迎えた記録測定。当時の世界記録の102メートルを大きく上回り、無事に「世界一」が認められた。ただ、同事務所の内藤彰人さん(57)たちはきつねにつままれたように立ちすくんだ。「そんなはずがない」

 記録は149・992メートル。「きっちり150メートルのはずなんですが」と訴える内藤さんに、ギネスの公式記録員は首を横に振った。この日は12月で特に冷え込む日だったため、パイプの素材がほんの8ミリだけ縮んだらしかった。

 以後は「お客さんに『なんでこんな中途半端なの?』とツッコんでもらえるいいネタができた」と気丈に振る舞う内藤さん。「逆に夏だったら160メートルぐらいになりますよたぶん!」と強弁しているという。

 ■伝説のおじさんも

 数字は中途半端でも、「世界一」のPR効果は抜群だった。

 このうんていを1分間でどれだけ進めるか競う「サンシャインカップ」を19年に開催すると、レスキュー隊員や巨大アスレチックの攻略を目指す人気番組「SASUKE(サスケ)」にエントリーする腕力自慢など、想定を超える約300人が参加してくれた。

 大会以外でも、その世界では有名らしい「うんていおじさん」が何度か訪れ、3ターン計450メートルを一度も降りることなく渡りきるという伝説を残していった。

 新型コロナウイルスの影響でサンシャインカップは中止が続いているが、「感染状況が落ち着いたら来年以降は再開したい」と丸川さん。それまでに、もし「世界一」の座を脅かされそうになった場合は「余裕を持ってまだあと20メートルほどはスペースを残している」と増設の考えをちらつかせ、後続をけん制する。

 うんていは無料で遊べる。午前9時半~日没まで。

https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/topics/202206/0015419540.shtml