https://www.newsweekjapan.jp/stories/assets_c/2022/06/220630chechen-thumb-554xauto-464349.jpeg
ロシアとともにウクライナに攻め込めというカディロフ首長の下に集まったチェチェンの兵隊たち(2月25日、首都グロズヌイ) Chingis Kondarov-REUTERS

<ロシアの兵力不足が伝えられるなか、プーチンの「忠実な配下」として知られるカディロフが援軍派遣の計画をテレグラムに投稿>

北カフカスに位置するロシア連邦の共和国チェチェンの首長で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「忠実な配下」として知られるラムザン・カディロフは、チェチェン人兵士から成る「堂々たる規模の」大隊を新たに4個編成し、ウクライナに派遣すると発表した。

カディロフが6月26日にメッセージアプリのテレグラムに投稿した声明文によると、チェチェン軍は「北アフマト」「南アフマト」「西アフマト」「東アフマト」の4個大隊を「早急に」創設する計画を進めている。

「4個大隊はチェチェンの男たちのみで構成する部隊で、補充要員としてロシア軍部隊に組み込まれることになる」

ロシア国営タス通信は3月下旬、ロシア軍の発表として、ウクライナにおける戦闘で死亡したロシア兵は1351人に上ると伝えたが、これを最後にロシアは戦死者数の公表を控えている。

ウクライナ軍が6月8日に発表した推定によれば、ロシア軍は侵攻開始以来この時までに3万1500人の兵員を失ったとみられる。この数字が正しいなら、プーチンは早急に兵力を補充する必要がある。

部隊の規模や派遣時期は不明
アメリカ・カトリック大学の歴史学教授で、米国務長官の政策立案スタッフも務めたマイケル・キメージは先日、本誌の取材に応じ、ロシア軍は「非常に重大な」人的損失を被っており、「兵員不足が深刻な問題になっている」と語った。

声明文でカディロフは「堂々たる規模」の部隊を派遣すると述べているだけで、具体的な兵員数は明らかにしていない。派遣の時期についても、「早急に」部隊を編成するというだけで、何日先、あるいは何週間、何カ月先の話かはっきりしない。

カディロフはチェチェン共和国議会議長のマゴメド・ダウドフと共に、首都グロズヌイの東に位置するハンカラを訪れ、4個大隊のうち2つが使用する基地の建設用地を視察したという。

ウクライナで戦う4個大隊の兵員には、居住施設、射撃場、スポーツ・トレーニング施設など「あらゆる施設が完備した」環境が与えられると、カディロフは声明文で誇らしげに述べている。

「選り抜きの兵士たちから成る支援部隊を新たに編成しようと考えたのは、チェチェンの若者の間で愛国ムードが著しく高まっているからだ」と、声明文には書かれている。「母なるロシアを守るために特殊作戦参加を志願する若者が急増している。彼らにその機会を提供するのがわれわれの務めだ」

今回の発表に先立ち、カディロフは数週間前にもテレグラムにチェチェン軍のフル装備の兵士たちが壮大な広場に陸続と結集する動画を投稿した。カディロフは広場を埋め尽くした兵士たちを前に「西欧諸国はあらゆる手段でロシアを破壊しようとしている」と熱弁を振るい、「われわれは世界に平和のもたらすために戦うのだ」と檄を飛ばした。

本誌はチェチェン軍の参戦について、ロシアとウクライナ双方の国防省にコメントを求めたが、今のところ回答はない。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/06/post-99003.php