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孫元一級潜水艦の3番艦「安重根」 出典 대한민국 국군 Republic of Korea Armed Forces [Public domain], via Wikimedia Commons

海上自衛隊と同等の戦力へ増強
 近年の韓国は、イージス艦の建造に加えて空母の保有計画など、海軍力の増強に熱心だ。

 潜水艦に関しても、90年代までは外洋型の大型艦は1隻も保有してなかった。それが現在は建造中の艦を含めて22隻、数の上では海上自衛隊と同等の戦力となっている。

 韓国海軍は、1993年にドイツから209型潜水艦を輸入して「張保皐」と命名。ドイツの技術協力で国内でのノックダウン生産も開始。これを張保皐級と呼ぶようになり2000年までに9隻を就役させた。

 張保皐は新羅時代の武将。同級には2番艦以降も新羅や高麗の武将の名を艦名に採用している。

 さらに、2007年には非大気依存推進機関を搭載した「孫元一」が就役し、2020年までに同型艦9隻が就役。ネームシップの孫元一は、韓国海軍の初代参謀長の名前。続く2番艦「鄭地」は高麗時代の武将の名に由来する。

 ここまでは良かったのだが。以降の艦名を聞くと、日本人は複雑な思いに駆られてしまう。

日本からすればテロリストなのだが…
 これまでの流れで行けば、孫元一級潜水艦3隻艦にも昔の武将か近代海軍の提督の名がつけられるだろう…と、思いきや、2009年に就役した3隻目の艦名は、なんと「安重根」である。

 日本からすれば、伊藤博文を暗殺したテロリストだ。

 この頃の韓国は、通貨危機を脱して自信を回復しつつある。就任2年目の李明博(イ・ミョンバク)大統領は、当初の親日的な態度に変化を見せるようになっていた。

 安重根就役から2年が過ぎた2011年に、日本政府に元慰安婦への謝罪を強く要求するようになり、2012年8月には韓国大統領として初の竹島上陸。これで日韓関係が険悪になってきた。

慰安婦合意に納得できない思いが艦名に?
 2013年に朴槿恵(パク・クネ)大統領が就任した時には、日本側も関係改善を期待した。

 しかし、朴大統領は最初から強硬姿勢。欧米諸国訪問時に慰安婦問題を訴える“告げ口外交”で、日韓関係はさらに悪化の一途をたどった。

 その最中の2014年に就役した孫元一級5番艦「金佐鎮」は、日韓併合時の義兵や満州で韓国独立軍を組織して日本軍と戦った独立運動家の名である。

 2015年12月には慰安婦合意が成立し、対立にも一応の終止符が打たれた。

 その半年後、2016年6月に就役した5隻目は「尹泰吉」と命名されている。尹泰吉は、上海で起きた天長節爆弾事件(1932年)実行犯の1人。多数の日本人を死傷させた人物の名を艦名に用いるとは…。