連敗の立憲民主
◆原点に返り明確な政策示せ◆
 立憲民主党が昨年秋の衆院選に続き、参院選でも敗北した。参院選公示前の23議席から17議席に後退。しかも比例代表では、日本維新の会に107万票もの差をつけられ、比例代表議席での野党第1党の座を奪われた。その衝撃は計り知れない。
 敗因は何か。全ての1人区で野党の候補を一本化させた過去2回の共闘が、今回は限定的にとどまった。離反した国民民主党を引っ張り込む力がなく、頼りなさを印象付けた。加えて、衆院選で共産党との協力が他党の激しい攻撃に遭い、腰が引けていたのは紛れもない事実だ。
 しかし、今回の退潮はそれだけで片付けられない深刻な問題をはらむ。比例の不振は、立憲民主自身が政策も含め魅力ある存在でなかった証左だろう。政権批判票を吸収できないだけでなく、むしろ社会の閉塞(へいそく)感を背景にした既成野党への不満の対象となり、維新の伸長、参政党とNHK党の議席獲得を許してしまった。
 惨敗した衆院選後に就任した泉健太代表は「批判ばかり」との批判を恐れ、「政策立案型政党」を掲げた。だが、先の通常国会では迫力を欠き、肝心の行政監視の役割を十分に果たせず存在感が希薄だった。参院選の公約で政権与党との違いを打ち出したが、有権者に浸透する時間もなかった。
 党再建の道は険しい。野党の原点に返り、国会で堂々と政権と対峙(たいじ)する。物価高騰対策や、再び猛威をふるい始めた新型コロナウイルスへの対応という命と暮らしを守る課題で、生活者目線の明確な政策を提示していく。自民党が前のめりになる抜本的な防衛力の強化と憲法改正にブレーキをかけたいならば、説得力のある理論武装を用意しなければならない。
 加速する人口減少と少子高齢化、持続可能な社会保障制度の構築、気候変動を踏まえた中長期的なエネルギー戦略などは、党の独自カラーを発揮できる分野でもある。財源に裏付けされた対案を練り上げ、国会、地方議員が一丸となって地道に訴えていくほかない。自民と比べ、格段に劣る地方の組織力を活性化させる知恵も必要だ。
 一方、野党共闘と決別した国民民主も議席を減らした。野党を名乗りながら、与党と共同歩調をとるのは有権者にとって極めて分かりにくい。この立ち位置を続けるならば、野党の看板を下ろすべきだろう。立憲民主、国民民主両党を支援し、自民にも接近する連合の路線も問われる。
 政治の場に緊張感をもたらすには強い野党が欠かせない。投票を棄権した人たちもターゲットに、政策力を磨き、対話を重ねていくことが求められる。

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