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記者会見する岸田文雄首相=首相官邸で2022年7月14日午後6時53分、竹内幹撮影

 岸田文雄首相は14日の記者会見で、電力の安定供給策として冬までに最大9基の原発稼働を進め、国内の電力消費量の1割相当分を確保するよう萩生田光一経済産業相に指示したと明らかにした。新型コロナウイルスの感染急拡大に対して、「新たな行動制限は現時点では考えていない」と述べた。また、参院選中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の葬儀を、今年秋に「国葬」として実施する方針を表明した。戦後、首相経験者の国葬は1967年の吉田茂元首相以来2例目となる。

 首相はエネルギーや食料品の価格高対策について、「早急に実行に移す」として、計5兆5000億円の予備費の中から月内に支出を決定するとした。1兆円の地方創生臨時交付金を活用して「地域の実情に応じたきめ細かな支援を行う」と強調した。

 電力需給については、今夏は10カ所以上の火力発電所の運転が再開し、「安定供給を確保する見通しが立った」と説明。冬には「再度需給逼迫(ひっぱく)が起こることが懸念されている」と指摘し、最大9基の原発稼働と追加で10基の火力発電所の確保を萩生田氏に指示したと明らかにした。

 稼働する9基は、関西電力の美浜3号機、大飯3、4号機、高浜3、4号機、四国電力の伊方3号機、九州電力の玄海3号機、川内1、2号機を想定。うち大飯3、伊方3、川内1、2の各原発は現在運転中だ。

 また、首相は新型コロナウイルスの全国的な感染拡大について、「今は感染症対策と経済社会活動の両立が大事だ」と述べ、新たな行動制限は考えていないとした。その上で、夏休みの時期を迎えるに当たって、主要駅や空港などに100カ所以上の臨時無料検査場を拡充すると説明。4回目のワクチン接種対象者を現在の60歳以上の高齢者と基礎疾患のある人から、60歳未満の医療従事者や高齢者施設従事者約600万人にも拡充する方針も表明した。関係審議会に諮った上で、来週にも接種を開始する。

 安倍元首相の国葬については「我が国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と強調。①憲政史上最長の約8年8カ月にわたり首相の重責を担った②東日本大震災からの復興や日本経済の再生、外交などの実績を残した③外国首脳を含む国際社会から高い評価を受けている④国内外から幅広い哀悼の意が寄せられている――の4点を理由に挙げた。内閣府設置法に基づいて閣議決定した後、全額国費で執り行う。

 銃撃事件が発生した際の警備態勢については「率直に言って、問題があったと考えている」と述べた。

 内閣改造や自民党役員人事については「何も決めていないが、課題が山積している状況では与党の結束が何より大事だ」とした。【高橋恵子】

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