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専門家会議であいさつする玉城デニー知事=19日夜、県庁

 沖縄県内の新型コロナウイルス感染者の急増が止まらない。医療現場が逼(ひっ)迫(ぱく)する中、県は夏季の観光最盛期を迎える。政府は人流を抑える行動制限に慎重な姿勢を示しており、県も「県独自の制限は厳しい」との見通しを示す。医療専門家からも「社会経済活動を全面的に止めることが唯一の解決策ではない」との声が上がる一方、感染者数を抑える実効性のある対応策はなく、県庁内には「手詰まり感」が漂う。

 「非常に危機的な状況。行動抑制を図る措置も検討しなければならないのではないか」。玉城デニー知事は19日夜の専門家会議の冒頭、こう説明した。

 県は主に新型コロナ対策として6月に約226億円の第1次補正予算を計上したばかり。医療機関の病床確保やPCR検査の経費などに充ててきた。県幹部は「やれることはやっている。今は正直、手詰まり感を感じている」とこぼす。

 感染は10代以下やその親など、家庭内感染が主流。従来の飲食店中心の対策では、ずれが生じる。行動制限をするにしても、どのようなアプローチが有効か決めかねているのが現状。別の県幹部も「経済界は『県は余計なことをせず静かにしていて』と思っているんじゃないか」と自嘲する。夏のかき入れ時を迎え、経済界から積極的対策を求める声はないという。

 県が新たな対策を打ち出せない背景には、事業者らに経済的支援をする財源がないという懐事情もある。飲食店への協力金や無料検査といったコロナ対策の主財源は、国の地方創生臨時交付金。本年度は5月に64億円を受け取ったが、メインは物価高対策の48億円。県が自由に使える16億円から医療機関への病床確保費などを差し引くと、残りは「数億円」。県関係者は「全く足りない」とこぼす。

 不満を募らせる観光業界は集会を20日に開き、コロナ禍の2年半近くの「支援策の貧弱さ」を訴える構え。県幹部は「足りないのはまさに国の支援。しっかりやってほしい」と返す刀で政府の対応を求めた。

(政経部・又吉俊充、下地由実子)

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