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岡本太郎の思想を持って、でたらめな行動をするタローマン(右)と奇獣「駄々っ子」(NHK提供)

「芸術は爆発だ!」などの言葉で知られる芸術家、岡本太郎(1911~96年)。その作品をモチーフにした奇獣らを、でたらめなやり取りでやっつける特撮ヒーロー、TAROMAN(タローマン)が人気だ。7月19日からNHK・Eテレで放送が始まるやいなや、深夜枠ながらクセになる人が続出。最終回放送を待たずに急遽(きゅうきょ)、2夜連続でシリーズをまとめて再放送する〝タローマン漬け〟も決まったという。

「なんだこれは!」

「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」(藤井亮構成・脚本)は7月19日から不定期ながら、平日午前1時前後に放送中。全10回構成で、1970年代の特撮作品を彷彿(ほうふつ)させる凝りに凝った映像が特徴だ。各回5分完結で、「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」など、岡本の挑発的な言葉がタイトルになり、作品世界を表現している。

NHKの番組公式サイトでは、「正義の見方ではなく、シュールででたらめなやりとりで奇獣と戦います」と堂々と宣言。番組は毎回、「なんだこれは!」という在りし日の岡本の声と写真で始まり、続く主題歌は「♪ばくはつだ! げいじゅつだ!」の繰り返しが耳から離れなくなる。

シュールレアリスム星からやってきた、太陽マスク姿のタローマンは、岡本の思想を持ってでたらめな行動で、周囲を困惑させながら奇獣と対決。駄々をこねながら街を破壊する「駄々っ子」や、人々に厳しい未来を見せつけ無気力にさせる「未来を見た」など、一筋縄ではいかない奇獣たちに、岡本本人のシャウトに合わせ繰り出す必殺技「芸術は爆発だ!」をお見舞い。すると敵は、絵の具のようなカラフルなビームを放ち、滅亡していく。

特撮は円谷プロも協力

見どころは、こだわり抜いた特撮映像と、岡本の言葉との融合だ。NHKエデュケーショナルの倉森京子チーフプロデューサーによると、7月23日から大阪中之島美術館で開催中の「展覧会 岡本太郎」に合わせ、今番組を企画。岡本に関するドラマやドキュメンタリーは先行の名作があるため、「岡本太郎さんが発した『ことば』を主人公にした、短い番組をシリーズで作ろうと考えました」。

そこで映像作家の藤井亮さんに相談し、タローマンという斬新過ぎるアイデアが誕生。怪物や怪獣とも評されてきた岡本作品を、そのまま特撮怪獣として登場させ、タローマンと対峙(たいじ)させる方向性が固まった。特撮といえば、「ウルトラマン」シリーズを制作した円谷プロダクションが本家本元。倉森プロデューサーは「文化的側面についてのリスペクトをお伝えし、作品と抵触しないキャラクター造形などについて意見交換をしていただきました」と振り返る。

今作の構成・脚本を担当する藤井さんも、「岡本氏の活躍されていた当時の特撮の世界を再現するために、現在のデジタルの技術を使いながらも、現在の特撮では使われていない技法をふんだんに使用しています。回転台にのせた背景を回転させることで流れる背景を表現し、飛行機などの吊り線もわざとではなく見えてしまうくらいの雰囲気を狙いました」とあふれる特撮愛を注ぎ込んだ。

そして番組の締めくくりには毎回、人気ロックバンド「サカナクション」の山口一郎さんが登場。〝再放送を幼少時から楽しんだ世代〟と称し、人形などグッズまで持ち出してタローマン愛を語るが、この思い出話もすべてフィクションだ。