江戸川の河口でカキ殻を回収する中国人たち
2022年7月19日、東京新聞にあるニュースが掲載された。まずは「市川・江戸川河口のカキ殻大量投棄 関東在住の中国人有志が回収に汗」と題された記事の冒頭部を引用しておこう。

「中国人の良くないイメージを吹き払いたい」——。千葉県市川市の江戸川河口部で、食用にカキ採りをする中国人らが河川敷に大量のカキ殻を捨てて問題化していることから、東京都内などに住む中国人が、カキ殻の回収作業を始めた。近く任意団体をつくり、地元の市民団体などと一帯の環境美化につなげたいとしている。
同胞の社会問題に対して、在日中国人自身が自浄作用を発揮してボランティアをおこなった。実に「いい話」である。そこで私はこのニュースをなにげなくツイートした。すると、活動の当事者を名乗るアカウントから「それは違う」とわざわざメッセージが来た。しかも、以前に別の取材(とあるデモ現場)で連絡先を交換したことがある中国人からも、やはり同じようなメッセージが来た。

どういうことか。彼らの話を総合すると、新聞で報じられたような「中国人の良くないイメージを吹き払いたい」などとは断じて言っておらず、それが自分たちの意見だと思われては大変に困るというのである。

とはいえ、私に送ってきたメッセージはいずれもネイティブの中国語であり、中国大陸の簡体字が使われている。客観的に見れば、彼らは明らかに中国人(すくなくとも元中国人)だ。ちょっと面倒くさそうな話だとも感じたが、私は以前に市川に仕事場を置いていたことがあり、土地勘がある。次回の清掃活動をおこなうときに現地を見に行ってみることにした。

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筆者撮影

8月7日朝、江戸川の河畔でカキ殻を除去するさまざまな人たち。 - 筆者撮影
台湾人じゃないですけど「外国人」です
8月7日朝8時前。集合場所である東西線妙典駅付近の江戸川河川敷に向かうと、青い旗を出している代表者たちが2人いた。いずれも日本語が非常に流暢な中華系の人たちで、年齢は30歳前後だろう。海に近いため、空気はうっすらと潮の匂いがした。

川辺では40人ほどの人たちが作業している。全体の半分くらいは、青い旗を出していた代表者たちと似た雰囲気を感じる20~30代の中華系の若い男女、あと10人くらいはもっと「大陸の中国人っぽい」年配の男女や、南アジア系など他の国の外国人、残る10人くらいは日本人で、地域の市民団体「妙典河川敷の環境を守る会」の関係者らのようだ。

「よお、あんたらどこの国の人だ? 台湾か?」
「あ……。台湾じゃないですけど。えーと、私たちは外国人です」

河川敷を通りがかった地元のおじさんに尋ねられ、「20~30代中華系」の若者たちが答えにならない返事をしている。ただ、おじさんが「台湾」だと勘違いしたのも理解はできた。彼らは仲間内では中国語を話しているのだが、全体的に雰囲気がソフトで、中国大陸出身の中国人にときに見られる自信ありげ(悪く言えば傍若無人)な雰囲気が、ほとんど感じられないのだ。

「クソみたいな体制」を支持する中国人は「救いがたい」
「あ、どもども。ツイッターをフォローしてます」

そして、彼らは私と面識がないはずなのに、親近感を示してくる人がいた。どうやら、私がこれまでプレジデント・オンラインに寄稿した大翻訳運動やおっぱい肉まん作戦の記事を読んでいたためらしい。代表者の1人である29歳の男性は話す。