約25kmもの長大トンネル
 東京~名古屋間の先行開業をめざして工事が進められる「リニア中央新幹線」。急峻な山脈を貫く「南アルプストンネル」も、掘進工事が最盛期を迎えています。その現場が2022年9月2日(金)、地元関係者や報道陣に公開されました。

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南アルプス本坑の掘削現場(乗りものニュース編集部撮影)。

 南アルプストンネルは長野県大鹿村から山梨県早川町まで、長野・静岡・山梨の3県にまたがる約25kmの山岳トンネルです。うち長野県内が8.4km、静岡県内が8.9km、山梨県内が7.7kmと、ほぼ三分する格好です。

 そのうち長野工区では、掘削の拠点となる「斜坑」が今年3月、小渋川・釜沢・除山の3本とも完成。現在は地中3地点から地質調査用の「先進坑」と、それを追いかける形で実際に列車が走る「本坑」を、順次掘り進めています。

 今回は、入口が隣り合っている釜沢と除山の2つの斜坑に入り、それぞれの工区で行われている先進坑・本坑の現場を訪問しました。

●先進坑(除山斜坑の工区)

 本坑に先立って、品川方面へ掘り進められています。列車が走るわけではないので断面は小さく、本坑の100平方メートルに対して先進坑は32平方メートルです。1.2m掘り進んでは支保工で側壁を支え、長さ3mのロックボルトを放射状に打ち込んだあと、表面をコンクリート吹き付けします(以上、一般的なNATM工法)。これを1日あたり最大4サイクル進めるといいます。

●本坑(釜沢斜坑の工区)

 先に掘削済みの先進坑を追って、並行して品川方面へ掘り進められています。こちらは1サイクルあたり1.0mの掘進です。一つの重機で、支保工設置とコンクリート吹き付けを一度に行うことができます。

 このペースでいくと、これらのトンネルは3年後には静岡県との県境部に到達する見込み。そこから先への進行は「その頃には、本事業についてご理解をいただけていると考えております」と話します。

バスで”迷宮”を探索
 普段は工事用車両しか通れないこれら坑道を、今回はバス車両で通過しました。坑口から現場までは10分ほどの道のりですが、果てしない奥へ進んでいるかのよう。坑道の脇には、発生土を送り出すベルトコンベアが続いているのが目に入りました。

 掘進現場はまるで昼間のような明るい状態に保たれていました。安全対策のため照明を複数配置しているとのことですが、闇の中を掘進部のみ照らしながら掘り進む典型的なトンネル工事のイメージではありません。

 なお、このあたりの地盤は粘板岩が中心で、湧水も少ないそうです。湧水が多い現場はポンプで常時汲み出す必要もありますが、こちらは「にじみ出てくる」程度で、比較的やりやすい現場とのこと。ただ、静岡県境に近づくにつれて山も険しくなり、土被りも1400mを越えるため、「土を見ながら慎重に掘削を進めていきたい」と話します。

 現在、南アルプストンネルでは3か所で同時に掘進中。1班10人、1日2班の計60人体制で工事が行われます。トンネル内は気温が20度周辺と一定で、夏は涼しく、冬は暖かいそうです。

 工事担当部長の古谷佳久さんは「ここまで着実に工事が進められたのは地元の方々や大鹿村、長野県ほか関係者のご協力やご理解をいただいたおかげです。今後も地域との連携と環境保全を重視し、安全第一で取り組んでまいりたい」と話しました。
【了】

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