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菅野志桜里弁護士/The Tokyo Post編集長(2022年9月2日、弁護士ドットコムニュース撮影)

旧統一教会などの問題をめぐり、消費者庁が立ち上げた霊感商法対策検討会の初会合が8月29日、開催された。8人いる有識者の1人、菅野志桜里弁護士(TheTokyo Post編集長)は「違法行為でたくさんの被害者をつくってきた反社会的な団体が長きにわたり宗教法人として存続してきたことが一番の問題点。今度こそ解決したい」と意気込む。

その背景には、衆院議員時代の2018年に消費者契約法や民法の改正議論で、救済に向けてもう一歩踏み込めなかったとの悔悟の念がある。「限定的な改正になったことで、救済が不十分になっていた。この宿題に取り組みたいと思っている。運用改善に終わらせず、今度こそ法改正を実現したい」。

複数の法律にまたがる困難な課題だ。自身に期待される役割を「問題点をわかりやすく社会化し、その解決策を法で示すこと」と語る菅野弁護士に、法改正も見据えた議論をどう進めていくべきか解説してもらった。

●マインドコントロール下の被害を救えているか
ーー被害対策をめぐっては(1)霊感商法被害や献金被害など個別の違法行為から個人をどう救済するか、(2)組織的に違法行為を繰り返す宗教法人自体をどう規制するかーの2段構えで考えると分かりやすいと菅野弁護士は主張されています。まずは既存の法律で、霊感商法対策は十分なのでしょうか?

2018年の消費者契約法改正で、一部の霊感商法に関しても取り消し権が拡大されました。施行から3~4年たって、どれくらい効果があったのか実態を分析する必要があります。この点については、初回の検討会で申し上げ、現在、消費者庁に調べていただいています。

実態を把握した上で、取り消し権がうまく機能せず救えていないということであれば、再度の消費者契約法の改正も検討すべきでしょう。また、近年は献金したお返しにプレゼント(編集部注:旧統一教会では3000万円の献金に対して「聖本」を渡していた)をもらうような被害が主流だといいます。

霊感商法そのものとはいいにくい被害についても、消費者契約法での救済、または特定商取引法に新たな類型を加えるなど、改善の具体策を探りたいです。検討会には、民法学者の方々もいますので、「契約」あるいは「商取引」と言えるための一定の指標をつくることもありうると考えています。

消費者契約法の条文では、霊感商法はこう定義されています。

消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。(4条3項6号)
「確実に回避することができる旨を告げる」という文言は、厳しい要件です。マインドコントロールにより自由意志を奪い、支配と服従の関係に組み込んでしまえば、ここまで言わなくても契約できてしまいます。むしろ法をすり抜けるためには言わないのではないでしょうか。もっと包括的な救済条項を検討しなければなりません。

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