ユネスコの世界無形遺産への登録申請を急いだワケ

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ベトナム・ホーチミンのスーパーで売られているキムチ

 「最も代表的な韓国料理は何か?」

 そう問われたら日本人を含む外国人はもちろん、多くの韓国人もキムチと答えるだろう。

 現在は、世界中で親しまれ、海外の寿司屋ではガリの代わりにキムチが添えられる店も多い。

 2013年には韓国政府が、キムチをユネスコの世界無形遺産に登録申請しようと動いたこともある。キムチの中国起源説もあるだけに韓国の伝統料理である証を求めたのかもしれない。

 中国では漬物を“泡菜”と呼び、各地で独自の泡菜が漬けられている。韓国から輸入されていたキムチもまた“朝鮮泡菜”と呼ばれ、中国の数ある泡菜の1種類といった扱い…。

 韓国政府は、それを危惧していたのかもしれない。

 案の定、2020年になるとキムチの起源を巡る中韓の論争が激化する。

 中国人ユーチューバーが四川省の泡菜を、キムチの起源として紹介したのが発端だった。

 韓国と同様に辛い味が好まれる四川省には、生姜や唐辛子と一緒に野菜を漬け込む“四川泡菜”があり、これがキムチとよく似ている。

高麗王朝の文献に登場したキムチの正体は?
 中韓の論争には、まだ決着がついていないのだが、実は、この戦いは日本にも参戦資格があるようだ。キムチの日本起源説。それを唱えることができる論拠がある。

 紀元前2世紀に中国の書物「詩経」で、塩漬けされた胡瓜(キュウリ)に関する記述が見つかる。これが人類史上最も古い漬物の記録だ。

 漬物が中国で発祥し、それが朝鮮半島や日本にも伝わったということだ。

 が、キムチは単なる野菜の塩漬けではなく、低温発酵させたり大量の唐辛子を入れたりと、そこには様々な手が加えられている。

 中国発祥の漬物が、朝鮮半島で長年かけて改良され、独自の食文化として完成した。そういった考えもできる。

 高麗王朝の記録によれば、宴の膳や祭祀のお供えにもキムチが備えられていたという。宮廷料理となるほどに洗練されていたということだ。

 しかし、高麗時代のキムチは、現在とはかなり違う。塩漬けした野菜にニンニク、ショウガなどを入れるところまでは同じだが、他の漬物とキムチとの違いを最も明確にする唐辛子が使われていないのだ。