横浜市民も知らない? 横浜港にある米軍基地
 巨大空母「ロナルド・レーガン」や揚陸指揮艦「ブルーリッジ」を始めとして多数のアメリカ軍艦船がひしめき合う神奈川県の横須賀基地。アメリカ軍艦船の基地としては、長崎県の佐世保とともによく知られた場所ですが、実は神奈川県には横須賀以外にもアメリカ軍艦船が常時停泊する基地がもうひとつあります。それが横浜市にある「横浜ノースドック」です。

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横浜ノースドックに停泊するアメリカ陸軍のラニ―ミード級汎用揚陸艇(武若雅哉撮影)。

「横浜ノースドック」が完成したのは、太平洋戦争末期の1945(昭和20)年のこと。元々は、「瑞穂埠頭(みずほふとう)」という名でしたが、終戦に伴い、アメリカ軍が接収。以後は在日米陸海軍が使用する米軍専用のふ頭です。「横浜みなとみらい」がある横浜港の概ね中央に位置しているのですが、横須賀のように戦闘艦艇が配備されているわけではないため、あまり目立つこともないからか、アメリカ軍の専用施設だということを認識している人も多くないように思われます。

 ただ、一方で横須賀には配備されていない、非常に珍しい米軍艦艇が横浜ノースドックには配置されています。そのひとつが、ラニーミード級汎用揚陸艇(通称LCU)。1990(平成2)年から就役しているアメリカ“陸軍”の船です。

 一般的に、軍用船というと海軍が運用していると思われがちですが、近海航行用や河川通航用の小型船などは陸軍が自前で持っている例が多いです。揚陸用の艀(はしけ)などはイギリス陸軍なども運用しているほか、戦前の旧日本陸軍はさらに大きな空母型の「あきつ丸」や「くまの丸」といった船も運用していました。

陸軍が自前の船を持つメリット
 自前であれば、いちいち海軍に支援要請を出す必要がなく、なおかつ海軍の運航計画を考慮することなく、自分たちのスケジュール最優先で動かすことが可能になります。また建造に際しても陸軍として使いやすいように独自設計を盛り込むことが可能です。そういった経緯から、アメリカ陸軍は独自に揚陸艇を整備し、横浜ノースドックに配置しているといえるでしょう。

 ラニ―ミード級汎用揚陸艇は海軍艦船と違い、外洋を航行する必要がないため、スピードは遅く航続距離も短いです。しかし、使い勝手は最大限考慮されており、たとえば船首は砂浜などに直接車両をおろすことができるよう、「バウランプ」と呼ばれる揚降式の道板構造であり、戦車なども自走で乗り降りできるようになっています。

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海上自衛隊が保有する輸送挺1号型。基準排水量420トンで、物資など約25トンを運搬することが可能(画像:海上自衛隊)。